第三十九話 めでたい幽霊がその十一
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「それでや」
「女性的な部分がですね」
「強うてな」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「芥川さんもですね」
「慕ってたんですね」
「そういうことや」
「そうですか」
「それで芥川さんみたいに最期はな」
「自殺してますね」
「あいつは心中やったけどな」
愛人となっていた女性と共に玉川上水に飛び込んでそうした、遺体が発見されたのはそれから六日後のことだった。
「芥川さんは一人で自殺して」
「そこは違いますね」
「しかしな」
それでもというのだ。
「自殺したんは同じやったな」
「そうでしたね」
「それで後で田中もな」
「田中?」
「田中英光や」
この作家の名前も出した。
「太宰を慕ってた」
「あの太宰さんのお墓の前で自殺した」
「そや、あいつもな」
その彼だというのだ。
「今自分が言うた通りな」
「太宰さんのお墓の前で自殺して」
「安吾も急に倒れて」
坂口安吾もというのだ。
「二人だけ残したわ」
「お二人ですか」
「無頼派のな」
自分達がそうだと言われた作家のグループのというのだ。
「石川淳と壇一雄がな」
「そのお二人ですか」
「残ってな」
そうしてというのだ。
「ずっと寂しい思いさせたな」
「そうでしたか」
「やっぱりな」
何と言ってもというのだ。
「皆長生きすべきやったな」
「織田作さんも太宰さんも」
「結核やったけどな」
それでもというのだ。
「長生きしとくことやったな」
「そうですか」
「ほんまな、人は長生きしてこそな」
まさにというのだ。
「色々出来るわ」
「そのことはよく言われますね」
「私は臆さんを自分の結核で死なせて」
佐京に俯いて話した。
「そして私自身な」
「早くですね」
「亡くなったけどな」
それでもというのだ。
「長生きしとくことや」
「それがいいですね」
「何と言ってもな。それで自分等もや」
佐京達を見て言うのだった。
「今はカップルでも将来結婚誓い合ってるやろ」
「おわかりですか」
「ああ、そうした感じやさかいな」
「雰囲気でわかりますか」
「そこはな。伊達に人見てもの書いてなくて」
小説家であってというのだ。
「それで死んでからもずっと大阪中巡って人見てへんわ」
「それでおわかりになりますか」
「自分等のこともな。それでや」
そうであってというのだ。
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