第三十九話 めでたい幽霊がその七
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「あれは栄養補給やなくてな」
「身体から力を引き出しますね」
「無理にな、それで一週間寝んでも平気になれるが」
「それだけの力を引き出すものは」
「使うとな」
それこそというのだ。
「どれだけ身体に悪いか」
「そうですね」
「しかも一週間寝んなんてどや」
「身体に悪いです」
佐京が即座に答えた。
「非常に」
「そや、ヒロポンは身体から無理に力を引き出してな」
「それだけで身体に負担をかけて」
「しかもそれだけ起きて動いてるとな」
「余計に悪いですね」
「あんな身体に悪いもんはない」
織田は笑って話した。
「使ってたからわかるわ」
「非常に危険ですね」
「私も身体がボロボロやなかったら使ってへんかった」
結核の症状が進んでいなければというのだ。
「ほんまな」
「そうでしたね」
「そう思うとな」
まさにというのだ。
「あれは禁止されて当然や」
「そうなんですね」
「それで今はな」
「使われてないですか」
「今使ったら犯罪や」
佐京に明るくそうなると話した。
「表にも出回ってへんしな」
「尚更ですね」
「もう使わん、それで煙草もな」
「今はですか」
「吸ってへん、美味いもんとコーヒーをや」
今度はそのコーヒーを飲んで話した、飲むその仕草は何処か気取っていて意識して恰好を付けている感じがするものだった。
「楽しんでるわ」
「そうですか」
「そや、それにな」
織田はさらに話した。
「こうしていつも歩き回ってな」
「大阪の街を」
「そうもしてな」
「楽しんでおられますか」
「まだ煙草屋でヒロポンが打ってる時にお店に行って」
煙草屋にというのだ。
「その時から言われてるわ」
「めでたい幽霊とですね」
「そや、そう言われてかなり経つわ」
夜空に気取らない笑顔で話した、コーヒーを飲む仕草は気取っていても笑顔は違っていてそうであった。
「もうな」
「昭和二十年代からですね」
「私が死んだのは二十二年でな」
「一月十日ですね」
「それでな」
「それからすぐですか」
「お葬式あってな、それですぐにな」
それこそというのだ。
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