第二章
[8]前話
「ヤクザ屋とは違います」
「常に死ぬ気です」
「戦が我等の本分です」
「その我々がそんな小さなことをするか」
相手を殴って終わらせる様なことをというのだ。
「だからだ」
「これよりですね」
「相手の家を解体するのですね」
「そうするのですね」
「そうするのだ」
こう言ってだった。
兵士達は磯浜の号令一下ヤクザ屋の家に押し入ってそうしてだった。
一糸乱れぬ動きで家にかかりまるで料理人が魚を捌く様にだ。
家を完全に解体した、これには喧嘩かと身構えていたやくざ者も彼の組の者達もだった。
唖然となった、そして家を解体し大笑して帰る磯浜達を見つつ言った。
「何てことをするんだ」
「あれが海軍か」
「家をあっという間に解体するとは」
「とんでもない連中だ」
「やくざ者の比じゃないぞ」
「遥かに強い」
「格が違う」
揉めた当のやくざ者達が口々に言った。
「軍人はこうなのか」
「わし等は喧嘩だが」
「軍人は戦っている」
「喧嘩と戦争は違う」
「だから格が違うか」
唖然とするばかりだった、それでだった。
彼等は茫然と見送るだけだった、そしてやり返すどころか以後海軍の軍人には手を出さなくなった。
その状況を見てだ。磯浜は言った。
「これが帝国海軍だ」
「戦う人間です」
「軍人です」
「そういうことですね」
「そうだ、喧嘩をやっているんじゃないんだ」
軍人はというのだ。
「戦争だ、戦争は何だ」
「命と命のやり取りです」
「国家の命運を賭けた」
「そうしたものです」
「だからだ」
それでというのだ。
「やくざ者なんてだ」
「めじゃないですね」
「ものの数じゃないですね」
「我々から見れば」
「そうだ、何ということはない」
はっきりと言い切った。
「また何かあってもだ」
「ああしてやりますね」
「我々の力見せてやりますね」
「喧嘩をせず」
「戦争を見せてやるだけだ」
笑って言ってだった。
彼は軍務を続けた、そして二次大戦で活躍した後は警察予備隊が設立されるとそこに入り海上自衛官として国防に貢献した。温厚な人格者だがやる時はやる、そうした人物だと言われ親戚や知人だけでなくその筋からも一目置かれた。
仁義なき帝国海軍 完
2024・10・25
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