第一章
[2]次話
仁義なき帝国海軍
呉は軍港だった、その為帝国海軍の軍人が多くいたが。
港の仕事の斡旋でその筋の者も多かった、そのことは広島と同じだった。
それでだ、帝国海軍少佐である磯浜重吉、三十代になったばかりで端正な顔と海軍士官の軍服がよく似合う引き締まった長身の彼はよく言っていた。
「港町には付きものだな」
「ヤクザ屋さんはですね」
「どうしてもですね」
「いない街はないな」
港町でというのだ。
「ほぼな」
「そうですね」
「港町では何処でもいますね」
「ああした人達は」
「やはり」
「だからだ」
それでというのだ。
「揉めることもあるな」
「肩が触れたとかで言って来るんで」
「それで、ですね」
「我々としてはですね」
「出来る限り揉めるな」
部下の兵士達によくこう言っていた。
「揉めるとだ」
「厄介ですからね」
「何かと」
「それで、ですね」
「そうだ、我々は戦うのが目的でだ」
敵国の軍隊と、というのだ。
「喧嘩は目的じゃない」
「だからですね」
「出来る限り揉めないことですね」
「それが一番ですね」
「そうだ、だが若し揉めたらだ」
磯浜はその場合のことも話した。
「舐められるな、海軍の力を見せてやれ」
「わかりました」
「そうします」
「海軍を馬鹿にするなですね」
兵達も応えた、そうした話をしていると騒動の方がやってきてだった。
ある水兵がやくざ者に因縁をつけられた、磯浜はその話を聞くとすぐにその兵士に対して強い声で言った。
「今から行くぞ」
「喧嘩ですか」
「いや、喧嘩ではない」
兵士に強い声で答えた。
「もっと凄いことをする」
「もっとといいますと」
「実際に行ってやる」
強い声で言うのだった。
「ここはな」
「それでは」
「そうだ、今からな」
まさにというのだ。
「だから大勢で行くぞ」
「大勢で」
「言ったな。海軍の力を見せるとな」
兵士に自分が言ったことを話した。
「だからだ」
「今からですか」
「思いきりやってやるぞ」
こう言ってだった。
彼は多くの兵士を引き連れて軍港を出た、そして。
その揉めたヤクザ屋の家のところに行くとだ、兵達に命じた。
「この家を解体しろ」
「ヤクザ屋を倒すのではないのですか」
「我々は」
「そうしないのですか」
「そんなことをしても小さい」
兵達に告げた。
「殴られてやられたで終わりだ、我々はそんな小さな力しかないのか」
「いえ、違います」
「我等は海軍です」
「帝国海軍です」
兵達は強い声で答えた。
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