TURN52 田中の苦境その六
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「あの方が全てを立て直されました」
「凄い人だな。噂には聞いてるがな」
田中も話を聞いて唸る。
「本当に万能の人なんだな」
「万能の天才です」
エルミーはそこは訂正させた。
「あの方にできないことはありません」
「じゃああの人がいれば欧州は大丈夫か」
「欧州はドクツが統一します」
エルミーはそこに夢を見ていた、二年前までのドクツでは到底見ることさえ考えられなかったあまりにも遠大な夢を。
「太平洋はお任せしますので」
「日本でいいんだよな」
「はい」
エルミーはレーティアが奥州だけで止まると思っていた。実際にレーティア自身もソビエト全土とアフリカまでを領有すればそれでとりあえずはと思ってはいる。
「ですが欧州は」
「まあこっちは生き残ればいいからな」
日本帝国自体は無欲である。田中もそれを言う。
「ただな」
「ただ?」
「総統いなかったらドクツってどうなるんだ?」
田中はふとこのことを思って言葉に出した。
「その時はな」
「考えられないです」
エルミーも特に考えることなくこう答えた。
「総統のおられないドクツですよね」
「ああ、その場合はどうなるんだ?」
「ドクツは総統により救われました」
そうなったことは誰が見ても明らかだった。
「ドクツはまさに総統の赤子なのです」
「全部面倒見てもらってるんだな」
「そうなっています」
エルミーもそのことは否定しなかった。その通りだからだ。
「そして総統閣下は」
「欧州全土もなんだな」
「全ては総統閣下あられてこそです」
エルイーはただ彼女が見ている現実、そしてそれは客観的に見てもそうだがその現実をさらに話していくのだった。
「総統のおられないドクツなぞ考えられません」
「そうかそこまでなんだな」
「あの方が全てを導かれるのです」
輝かしい未来、それにだというのだ。
「私はあくまであの方を信じますので」
「そうか。君はまさに忠臣だな」
平賀はエルミーの話をここまで聞いて述べた、無論久重の口からだ。
「アドルフ総統の」
「忠臣ですか」
「あの方に対してあくまで忠誠を誓っているな」
「そうありたいと思っています」
やはり顔を紅潮させている、そこに明らかな忠誠心があるのは間違いない。
「何としても」
「そうだな。だが忠臣よりさらに素晴らしいのはだ」
「良臣ですね」
「そうだ。忠義だけではなくだ」
「そこに資質が備わることですね」
「忠臣は確かに素晴らしい」
平賀も忠臣という存在は否定しない。
「しかしそれ以上にだ」
「良臣はですね」
「主君に忠義を捧げるだけでなく救う者だ」
「総統閣下を」
エルミーの心が動いた、平賀の今の言葉を聞いて。
そのうえで上気から確かな顔になりこう言
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