TURN52 田中の苦境その五
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「本当に髭はね」
「駄目か」
「猫は顎とか触られるのはいいんですよ」
「あと耳もだよな」
「そうです。耳もいいんですよ」
「俺の実家魚屋で猫には結構気をつけてたんだがな」
魚を狙ってくるからであるのは言うまでもない。
「それでも猫は好きだぜ」
「猫はいい生き物ですよ」
「だよな。確かに魚を狙うのはいただけないけれどな」
「その辺りのいらない部分をくれたら満足しますので」
要するに食べられればいいというのだ。
「大目に見て下さい」
「実際にそうしてるさ。しかしあんたは俺の味方か」
「嫌いじゃないですから」
だからだとだ。久重は右の前足を出して田中に告げる。
「本当に頑張って下さいね」
「ああ、祖国さん達から愛情も受けてるしな」
「じゃあ祖国さん達に応える為にも」
「やってやるぜ」
強い声で言う田中だった。そうして実際に。
彼は試作型潜水艦に乗り込む。その際エルミーも一緒だった。
エルミーはその楚々とした顔で田中にまずは挨拶をした。
「では宜しくお願いします」
「ああ、こちらこそな」
「潜水艦のことなら任せて下さい」
エルミーは田中を見上げてこうも言った。
「この潜水艦もユーボートを基にしていますので」
「それであんたもか」
「そうだ、私が呼んだ」
潜水艦の中には平賀もいる。勿論今喋ったのも彼女の頭の上の久重だ。
「君一人では無理だからな」
「で、あんたもかよ」
「開発者としてだ」
ここに来ているというのだ。
「では共に励もう」
「ああ、じゃあな」
「潜水艦ですが」
エルミーは早速田中に話す。
「基は駆逐艦です」
「あれから作ったのかよ」
「はい、レーティア総統は駆逐艦をベースにされました」
ここでも彼女の名を出すエルミーだった。
「そこに異次元への潜航技術を発見されて」
「そしてかよ」
「そこに入り航行する技術を確立されたのです」
「口で言うのはたやすい」
平賀も久重の口から言う。
「しかし実際にそれを発見し実用化することはだ」
「難しいんだな」
「私では無理だ」
日本帝国きっての天才である彼女でもだというのだ。
「到底な。これは天才の為せる技だ」
「あの総統が天才ってのは俺も聞いてるぜ」
「人類史上最高の天才だ」
天才は天才でもそこまでだというのだ。
「ここまで出来るのはな」
「はい、総統はまさに人類史上最高最大の天才です」
エルミーはその顔を上気さえさせている。
「ですからこうしたものもです」
「そうだな。この潜水艦というものは」
平賀もエルミーのその言葉に同意して言う。
「まさに天才の発明だ」
「そうです。あの閣下こそは」
エルミーは顔を上気させたまま言っていく。
「この人類の指導者となる方
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