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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第110話 第一〇二四哨戒隊 その1
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 クソッと悪態をつくキャゼルヌを見て、改めてトリューニヒトが軍内で評価が二分されていること、そして二派の溝が日々追うごとに深くなっていることを痛感させられる。後方勤務の人間を中心に、トリューニヒトに媚びへつらう人間が増える理由をよく知っているはずのキャゼルヌですらこの有様だ。

 その溝の深さを認識すれば「ロボスがシトレの下を訪れた」と「その場で俺の話が出た」と言う二つの事実は、まったく別の意味を持つ。原作でもシトレとロボスがライバル関係にあることは記述されている。派閥の領袖としてお互いを評価しつつも、やや敬遠していると言った関係だったはずだ。実働部隊側が一丸となって国防委員会と対峙するようなことは考えにくいが、軍内部で急拡大するトリューニヒトの影響力を二人が相当警戒していると考えるべきだろう。

 そしてロボスの口から俺の名前が出たということは……

「潤滑油の仕事っていうのは正直、戦争よりメンドクサイんですがね」

 軍政と軍令と実働の三本柱を、対立させることなく円滑に回すいずれにも組しない仲介者の役割を、俺に託そうとシトレとロボスは考えているのだろう。正直そこまでロボスに期待されているとは思わないが、どちら付かずの面倒な『蝙蝠』の役割を、シトレ派の孺子に押し付けられればよしと位は思っているはずだ。

「そこまでわかってて、なんで機動哨戒隊を志願したんだ? 実戦部隊への異動希望だったら、第五(ビュコック)でも第四七(ボロディン)でも、なんなら第三(ロボス)でもよかったじゃないか」

 第八(シトレ)と言わないのはキャゼルヌの配慮だろう。別に俺自身が哨戒隊を志願した覚えはないのだが、そこはトリューニヒトがプリズムのように話を曲げて統合作戦本部に伝えたのか。トリューニヒトとの話をキャゼルヌにしても良かったが、流石にそれは守秘義務云々を超えた話だ。

「出世したいから、ではダメですか?」
「四分の三の確率に賭けてまで、敬愛するトリューニヒト氏に尻尾を振らなければならない理由が、お前さんにあるのか?」
「尻尾を振るというか、自分の為ですよ」

 出世するというよりも(遠隔操作でトリューニヒトが)動かせる権限を出来る限り早く拡大させたい。犬として国防委員会内で飼っているだけでは、いずれ武勲は薄まり実働側からは見向きされなくなる。絢爛たるダゴン星域会戦以降、同盟軍そして同盟国内に深く根を張る『武勲第一主義』は、たとえトリューニヒトであっても無視できない。

 キャゼルヌのように誰にでもわかるような有能さを見せない限り、後方勤務が主体で武勲を上げない軍人はピラート中佐のように軽視される。そう言った不遇を纏めて取り込むトリューニヒトの手腕を、キャゼルヌは理解している。

 そこでトリューニヒトは「実戦でもそこそこ実績を残せるで
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