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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第110話 第一〇二四哨戒隊 その1
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は離れているが、ハイネセンよりもはるかに近く法の目は荒い。継続する戦闘によるストレス負荷は高く、士気の低い軍隊には麻薬を流し込みやすい。そして中毒者を使って指揮官を襲わせるのは奴らの十八番だ。

 そう考えると常に部隊のクリーニングを行わなければならないというわけだが、任務に時間的な余裕はない。二年の『お勤め』を生き延び前線から戻ってくる哨戒隊もある。その穴を埋める必要があるし、彼らの帰りを待っている人達が大勢いることに変わりはない。

「おう、待たせたな。汚職と美食とゴルフに溺れし不詳の後輩よ」

 そんなことをつらつら考えていると、元々この会議室を予約するよう俺に指示していた張本人が、チャイムも鳴らさず会議室にとぼけた顔をして入ってくる。去年昇進して階級は大佐だから当然先に俺は起立・敬礼すると、尻尾のある悪魔もめんどくさそうに額に右手を当てるだけで応えた。

 だが視線は俺ではなく、俺の座っていた机の上にある紅茶に向かっていたので、回れ右して新しく二杯の紙コップに紅茶を淹れて前に置くと、皮肉と毒舌の練達者は急にらしくなくしんみりとしている。

「珈琲の方がよかったですか?」
「……いや、これでいいさ。マシンで淹れた紅茶でも、紅茶は紅茶だ」

 そう言うと悪魔……キャゼルヌは紙コップの中身半分を一気に喉へと流し込む。口につける前の一瞬、手が止まったのは間違いないが、俺は気づかぬふりで自分のコップに口を付ける。

「さて、とりあえず防人になったお前さんを、こんなところに呼び出した訳はいろいろあるが、まぁその前にだ」
 ンんと、らしくなく咳払いすると座っている俺の額を指差してキャゼルヌは続ける。
「たまにはシトレ提督のところにも顔を出せ。お前さんの国防委員会での仕事ぶりは、耳が聞こえるお偉方の間ではなかなかの評判でな。お前さんの話を聞きに、シトレ提督のところに『いろいろな人』が来るんだよ」

 これは忠告と言うよりは伝言と言うべきだろう。後方勤務でトリューニヒトの『子飼い』のような動きをしている俺は、元々はシトレの『秘蔵っ子』とも言われていたわけで。シトレに媚びを売りたい奴、自分を売り込みたい奴、それにトリューニヒトとシトレの関係を探りたい奴など、腹に一物抱えている人間が俺をダシにイロイロ探索していると言いたいのだろう。

 そのような状況下であっても、シトレは俺が全面的にトリューニヒトの子飼いになっていないと分かっているので、キャゼルヌを通じて挨拶に来いと言っているのだ。自分から名指しで呼び出せばトリューニヒトとの溝がさらに深くなると分かるだけに、ワンクッションを置きたいのだろう。

「『楢の家』のガーリックソテーもご無沙汰ですから、都合がついたら赴任前には必ず食べに行きますよ」
「あの店の白ワインは『予約制』
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