暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第110話 第一〇二四哨戒隊 その1
[1/7]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 宇宙暦七九一年 九月より ハイネセンポリス

 八月が人事異動の季節であることは間違いなく、軍に限らず役所の方でも各所で異動が発表されるのだが、俺の人事が公表されると、ありとあらゆるところから『統合作戦本部人事課』に抗議が行ったらしい。

 特に財務委員会と人的資源委員会からの抗議は相当なものだったらしく、統合作戦本部人事部長からトリューニヒト自身に『援軍の要請』が行われたと、ピカピカの中佐の階級章を付けたカルロス=ベイがにこやかな笑顔を浮かべて引継ぎの時に教えてくれた。

 一方で同じタイミングでエベンスも中佐に昇進し、統合作戦本部法務部への異動となった。士官学校時は法務研究科だったらしいので、そのキャリアに相応しい部署に行ったということになるだろう。だがこれで一年前に作られた戦略企画室参事補佐ボロディン分室のメンバーは見事に散り散りになった。

 そして俺は巨大な統合作戦本部ビルの地下二三階にある、四〇人程度が入れる程度の小会議室の端っこで一人、一〇分前に貰った書類を前にお茶している。

「第一〇二四哨戒隊、ね」

 小なりとも独立部隊指揮官。ジャケットの胸につけるは、軍旗をあしらった指揮官徽章。黄丹色のミニスカーフは将官になってから付けることになっているので、今は付いていない。
 嬉しくないと言えば嘘になる。部隊指揮官としては一番下であっても、攻撃指示を部下に直接下せるのだ。前世で子供の頃にテレビ画面を見ながら、「撃て(ファイヤー)!」と言っていた夢が、小なりとはいえ現実となった。

 だが同時にその対価として、不都合な現実と足元に絡みつく暗雲がこれからの俺を待ち受けている。

 そもそも『哨戒隊』とは、辺境星域管区と呼ばれるイゼルローン回廊出口からフェザーン回廊出口に渡る、総数五〇〇にも及ぶ恒星系を統合した軍管区内において、防衛・哨戒・海賊討伐・船団護衛・掃宙などあらゆる任務に、独立した行動が可能な一番小さい戦闘集団という位置づけになる。ちなみに制式艦隊や機動集団に付随する哨戒隊は、編制規模では同じだが任務は艦隊の哨戒任務が中心で、ここまで任務は多様ではない。

 配属戦力は大きくないが、バランスは良い。戦艦一分隊、巡航艦三分隊、駆逐艦二分隊、支援艦一分隊。一分隊は五隻で成り立つので、定数は三五隻。宇宙空間戦闘の基本となる巡航艦が戦力の半数を占め、より強力な火力と防御力を持つ戦艦を部隊の主軸とし、即応近接防御や分散哨戒が可能な機動力を有する駆逐艦が付随する。支援艦分隊には中・小型の補給艦と工作艦が配備され、長期間にわたる多種の任務に堪えられるようにもなっている。

 だがそれはあくまで規定通りに定数が配備された場合だ。現実は全くもって甘くない。

 まず定数通りに配備されることはない。だいたいが部隊の解
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ