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金木犀の許嫁
第三十九話 めでたい幽霊がその四

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「けれどね」
「あまり飲まないのね」
「うち基本日本茶だね」
「よく飲むわね」
「お抹茶もね」
 こちらの茶もというのだ。
「よく飲むし」
「そうよね」
「元々武士、士族の色が強いから」
「猿飛家のご本家だから」
「だからね」
 このこともあってというのだ。
「お家も日本のお屋敷だし」
「飲みものも」
「お茶が多いんだ」
 そうだというのだ。
「昔からね」
「だからコーヒーあまり飲まないのね」
「紅茶もね」
 こちらもというのだ、そう話してまたコーヒーを飲んでそのうえで佐京は夜空に微笑んで言ったのだった。
「そうだね」
「そうよね」
「お茶でもね」
「紅茶もなのね」
「やっぱり嫌いじゃないけれど」
 それでもというのだ。
「お家がそうだから」
「日本茶ね」
「こちらなんだ」
 主に飲むのはというのだ。
「やっぱりね」
「そうよね」
「うちではね。けれど」
 コーヒーを飲みつつ話した。
「こうして飲むと」
「コーヒーも美味しいわね」
「そうだね」
 ここでも微笑んで答えた。
「そうだね」
「その意味でも入ってよかったわね」
「このお店にね」
「ええ、じゃあこのままね」
「二人でね」
「飲みましょう」
 笑顔で話してコーヒーを飲んでいく、この時二人はまさかその人が来るとは思わなかった。だがその時にだった。
「私の馴染みの場所行ってるな」
「?」
 二人はソの声がした方を見た、すると。
 ボルサリーノにマント、着流しの三十代の男がいた。マントは身体全体を覆っている。その男を見て二人はすぐにわかった。
「織田作さん?」
「そうですか?」
「そや、相席ええか?」 
 その彼は二人に笑顔で答えた。
「今から。私と話したいやろ」
「はい、そう思っていましたけれど」
「お会い出来たらッて」
 二人は驚きを隠せず答えた。
「そやけどです」
「まさか」
「会いたいと思った人に会うもんや」
 織田は店の者にも話して二人と相席、佐京の隣に来て話した。
「世の中はな。会いたくない人にはばったりとや」
「会うものですか」
「そちらはそちらで」
「そや、それで自分等私と会いたいって思ったさかいな」
 だからだというのだ。
「こうしてや」
「お会いしてるんですね」
「織田作さんと」
「そや、それでや」
 織田はさらに話した。
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