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金木犀の許嫁
第三十九話 めでたい幽霊がその三

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「織田作さんがふらりと」
「来られるかも知れないんだ」
「そうじゃないかな」
「そうね」
 夜空は佐京の言葉に微笑んで頷いて答えた。
「そうかも知れないわね」
「そうだね、それじゃあ」
「この辺りのね」
「喫茶店に入ろう」
「そして」
 そのうえでとだ、夜空は佐京に話した。
「若しかしたら」
「織田作さんにお会い出来るね」
「そう、それじゃあ」
「これからね」
「喫茶店入りましょう」
「そうしたら」 
 佐京もここで笑顔になって言った。
「若しかしたら」
「織田作さんが来てくれるわね」
「あの銅像の恰好だよね」
 ここでだ、佐京は夜空に尋ねた。
「織田作さんは」
「白華ちゃんが見た限りじゃね」
「そうだよね」
「着流しにマントにボルサリーノの帽子よ」
 その恰好だというのだ。
「どうやらね」
「それじゃあすぐにわかるね」
「ええ、じゃあこれから二人でね」
「喫茶店に行きましょう」
「それじゃあね」
 こう話してだった。
 二人で傍にあった喫茶店に入った、そして一緒にコーヒーを頼んだ。そのうえで一緒にコーヒーを飲んだが。
「夫婦善哉でも飲んでいたわ」
「コーヒーをなんだ」
「そうなの」
「そうだったんだ」
「当時はハイカラでね」 
 コーヒーはというのだ。
「それでね」
「織田作さんも好きで」
「それで外出したら」
 その時はというと。
「はじめて行く場所だとね」
「まずはなんだ」
「喫茶店を探して」
 そうしてというのだ。
「そこに入ってね」
「コーヒー飲んでたのね」
「そうだったのよ、それでね」
「作品でもなんだ」
「書いてるのよ」
 コーヒーを飲む場面をというのだ。
「そうだったのよ」
「そうなんだね」
「だからね」
 佐京に微笑んで話した。
「こうして飲んでいたら」
「ひょっとしたら」
「織田作さん来るかもね」
「来てくれたら面白いね」
 佐京も話を聞いて微笑んで応えた。
「実際に」
「そうよね」
「実は俺あまりね」
「コーヒー飲まないわよね」
「嫌いじゃないけれど」 
 それでもというのだ。
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