第一章
[2]次話
肉寿司への拒否感
寿司をはじめて見てだった。
ブラジルから日本の八条製鉄大阪本社に転勤してきたホセ=アントニオアフリカ系の大柄で細面の彼は言った。
「これが本場のお寿司ですね」
「確かブラジルでもあるね」
店に連れて行った上司の前川良則が隣の席から言ってきた、小柄で四角い顔に丸く大きな目と黒く短い髪の毛が印象的だ。
「そうだったね」
「ですがやっぱり違います」
「本場のお寿司とは」
「はい、それでです」
だからだというのだ。
「本場はこうなんだって」
「思ってるんだ」
「そうです」
こう言うのだった、握り寿司達を前にして。
「そう」
「そうなんだね」
「美味しそうです」
アントニオは笑顔で言った。
「それじゃあ今から」
「うん、一緒に食べよう」
前川は笑顔で応えた。
「これからね」
「いただきます」
アントニオは頷いてだった。
鮪やハマチの握り寿司を食べていった、そして美味いと言ってだった。
彼は寿司が好きになった、刺身もだ。だがある日彼は前川に職場の昼休み昼食から帰ってこんなことを言った。
「あの、肉寿司っていうのは」
「生のお肉をネタにだよ」
「そうして握ったお寿司ですか」
「そうだよ」
「ああ、日本じゃ牛肉や馬肉もでしたね」
「お刺身にして食べてね」
前川はそれでと話した。
「握り寿司にもするんだよ」
「そうですね」
「だからね」
それでというのだ。
「そうしたお寿司もあるから」
「だからですね」
「よかったらね」
前川にさらに話した。
「よかったらね」
「肉寿司もですか」
「どうかな」
「いや、生のお魚はいいですが」
アントニオは前川に眉を曇らせて答えた。
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