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名誉の負傷
第二章

[8]前話
「それこそ何かあったら」
「アメリカは海兵隊ですね」
「あそこが動くけれど」
「あの人は海兵隊におられて」
「海外で多くの人を救助したことがあったんだ」
 そうしたことがあったというのだ。
「アメリカ人をね」
「それで、ですか」
「その時にね」
「お顔をですね」
「負傷して」
 そうしてというのだ。
「それでなんだよ」
「そうだったんですか」
「だからね」
 それでというのだ。
「あの傷はね」
「名誉の負傷ですね」
「そうだよ、多くの人を救ったことによる」
「そう思うと素晴らしいですね」
「人を救っての傷だからね、というかね」
 上司は大久保に話した。
「傷は誰だって受ける可能性があるんだ」
「私達も」
「そう、例え顔に傷が出来ても」
「それが悪いか」
「悪いことじゃないよ」
「そうですね」
「傷があってどうとか言うのは」
 このことはというのだ。
「それだけでね」
「人間としてどうか、ですよね」
「そうだよ、傷で人に偏見を持ったら」
「それだけで駄目です」
「本当にね、現にあの人は顔に傷があっても」
「心も行いも立派です」
「そうだよ。だからね」
 そうであるからだというのだ。
「私達もあの人を敬愛して」
「そうしてですね」
「親しくお仕事をしていこう」
「わかりました」
 大久保は上司に微笑んで答えた、そうしてだった。
 マックイールを人として敬愛しそのうえで共に仕事をしていった、彼との仕事は常に充実したものだった。そのことを常に心から喜んだのだった。


名誉の負傷   完


                 2024・10・20
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