第一章
[2]次話
名誉の負傷
デビー=マックイールの顔には大きな傷がある、まるで宇宙海賊の様なそれがだ。
長身でブラウンの髪の毛をセットし逞しい身体である、引き締まった顔立ちが目立つ。
その彼を見てだ、日本から彼がいるサンフランシスコに来た大久保里美小柄で長い茶色の髪の毛をツインテールにした童顔で均整が取れたスタイルの彼女は言った。仕事の取引で彼の事務所に来て会ったのだ。
「ではお仕事は」
「この契約内容で、ですね」
「お願い出来ますか」
「はい」
マックイールは確かな声で頷いた。
「それでは」
「宜しくお願いします」
「わかりました」
最初はこの程度だった、だが。
大久保はマックイールの評判を聞いてだ、職場で上司に言った。
「お顔が広くて」
「皆あの人を慕っているね」
「尊敬していますね」
「そうだね」
「確かに一緒にお仕事をしていて」
それでというのだ。
「とても親切で」
「紳士だね」
「温厚で」
そうであってというのだ。
「真面目ですし」
「いい人だね」
「お仕事は的確で速くて」
そうであってというのだ。
「素晴らしいです、ですが」
「それ以上にだね」
「評判のいい人ですね」
「実はね」
ここで上司は大久保に話した。
「あの人のお顔の」
「傷ですね」
「目立つね」
「事故でかなとか思ってますが」
「内心驚いたね」
「はじめてお会いした時は」
大久保は素直に答えた。
「そうでした」
「そうだね。あの傷こそ皆があの人を尊敬する理由だよ」
「といいますと」
「あの人昔は海兵隊にいたんだ」
「海兵隊ですか」
「真っ先に火事場に飛び込むね」
有事の際はというのだ。
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