暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第224話:メロディーに隠されたもの
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「いや何、本番前に余分に疲れてるんじゃないかと思って、ちょっと差し入れをな」
そう言ってガルドが差し出してきたのは、タッパーに入ったレモンの輪切りのハチミツ漬けだった。体を動かして疲労が溜まった筋肉にはありがたい差し入れに、マリアと翼は早速手を伸ばした。
「ありがとう。ちょうどこういうのが欲しかったの」
「うむ。冷えたドリンクもいいが、これもまたありがたい」
ハチミツの甘さとレモンの酸味が疲れた体に染み渡る。2人が一息ついている間、ガルドはまるで何かを探す様に周囲に視線を向けていた。ガルドの異変に気付いたマリアは、レモンを齧りながら彼の視線の先を追いつつ何を探しているのかを訊ねた。
「何? 何か探し物?」
「ん? あ〜、まぁ。セレナが最近姿が見えない事が多くてな」
割と最近の話だが、ガルドはセレナとの時間が少なくなってきている事に気付いていた。無論その理由の一つは南極での出来事に端を発した騒動で時間に余裕が少なくなってきているからだが、それとは別にセレナがガルドに内緒で1人何処かに行っている事が多くなっていたのだ。それとなく何をしているのかを聞いてみた事もあるが、本人に直接聞いてもはぐらかされて終わってばかりであった。
寂しさと不安にガルドが表情にほんのり影を落としていると、マリアは彼を元気付ける様に軽口を叩いた。
「何しょげてるのよ。いい歳した大人なんだから、そんな事で肩を落とさないの。折角だから、歌って元気付けてあげましょうか?」
「マリア、そんな子供扱いしなくても――」
ちょっと揶揄おうと少し悪い笑みを浮かべるマリアを翼が宥めようとするが、一方のガルドはそれどころではなかった。彼はマリアが放った一言に、何かに気付いたかのようにハッと顔を上げた。
「歌……そうだ! マリア、何時もの”あの歌”! ちょっと今歌ってみてくれないか?」
「え? 何よ急に?」
「いいから!」
何やら突然急かしてくるガルドに、マリアも翼も頭にハテナマークを浮かべる。とは言え、何か考えがあっての事だろう事は分かるので、取り合えずマリアは要望通りに彼の言う歌……マリアとセレナがよく口ずさむ『Apple』を歌い出した。
「リンゴは落っこちた、お・そ・ら・に〜……」
「リンゴは落っこちた、地・べ・た・に〜……」
「星が〜、生〜まれて〜、詩が〜生〜まれて〜……」
暫し、トレーニングルームにはマリアの歌が響く。ガルドは真剣にその歌に耳を傾け、翼も何処か不思議な歌詞に聞き入る様に目を瞑っている。
そんな時、歌っていたマリアは自身が口ずさむそのメロディーに何かを感じた。
「ルルア〜メルは、笑った〜、と・こ・しえと〜…………ッ!?」
途中で歌を止め、ハッとした顔で考え込む
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