暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第224話:メロディーに隠されたもの
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んだけど、もっと慌てたり神経質になってるかと思ったのだけど?」
マリアのその言葉に咄嗟に唇を尖らせ反論しようとした翼ではあったが、よくよく考えずとも存外否定できないと言う結論に達して不服そうにしながらも喉元まで出掛かった言葉を飲み込むしか出来なかった。
「む……ん、まぁ……当然心配はしているさ。ただ……」
翼が冷静さを保てているのには理由がある。その理由にも見当が付いているマリアは、床に両足を投げ出す様に座り天井を仰ぎ見ながら翼が落ち着いている理由を予想し口にした。
「颯人が黙ってるから……でしょ?」
「……当たらずとも遠からずと言ったところだ」
実際には、奏が連れ去られた直後の颯人の様子があったからこそ保てている冷静さだった。奏を連れ去られると言うのに、何も出来ずにいた無力感を感じているのは颯人も同様だった。そして彼は、その無力感を受け流す事が出来るほど落ち着いた人間ではない。彼が怒りに身を任せて瓦礫を粉砕した事や、その足元で漏れ出た魔力に火が付き足跡が燃えている様子は翼の脳裏にも鮮明に刻まれていた。
人間と言うものは自分よりも怒り狂った者を見れば、自分の怒りを忘れる事が出来る。翼は正にそんな気持ちであり、普段飄々としている彼が感情を露わにしている姿に逆に冷静さを取り戻せていた。もし彼が怒り狂う様子を見ていなければ、もう少し翼も冷静さを欠いていた事だろう。
「颯人さんなら、奏を助ける為に何だってやる。なら、私はそれを手助けしてみせるさ」
「…………そう」
疲労を滲ませながらも強い意志を持った目をする翼に、マリアは眩しいものを感じて思わず目を細めた。以前ウェル博士がギアの力を引き出すのには愛が必要だと宣い、そして実際に愛の力がシンフォギアの力を引き出すのに役立っていると知った。それが例えどんな形のものであっても、だ。
であるとするならば、翼もきっと奏への愛で力を引き出すに違いない。そう思うとマリアは何だか彼女達が羨ましく感じられてしまった。
あまりにジッと見過ぎていたからか、視線に気付いた翼がキョトンとした顔で首を傾げる。
「? どうした?」
「え?」
「さっきから私の顔をジッと見ているようだが……何かついてるか?」
言われてマリアは、自分が翼の顔を凝視していた事に気付き慌てて手を振りながら顔を背けた。
「あ、いや! 違う違う、ちょっとぼーっとしてただけだから」
「そう、か……?」
あまりの慌てように翼もそれ以上の追及はしないでおいたが、気にはなるのか時折視線をマリアの方に向けている。その視線が何だか居心地が悪くて、思わず明後日の方に目を向けているとその先にある扉が開いてガルドが入ってきた。
「おぉ、やっぱりここに居たか」
「あらガルド、何か用?」
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