GGO編
九十九話 少年の内は何を宿すか
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少年が突然現れた新川に驚いたようにビクリと震え、次いで泣きそうになりながら呟き始めた。見ると、少女の膝には少し大きめの擦り傷が出来ていた。
「どーだ?」
「桐ヶ谷さん、あの、この子を向こうの水道に連れて行けますか?」
新川自身の腕は細腕で、小学生の少女とは言え彼一人で持ち上げるのは難しそうだ。対し涼人はと言うと、毎日それなりに鍛えているお陰でそれなりに少女一人程度ならなんとかなる。
「お安いご用だ。ちょっとごめんな〜お嬢ちゃん」
「うええぇぇ……ぐずっ」
未だに泣いている少女を抱え上げると、すぐ近くの公共水道に連れて行く。
新川は先について、既に水道水を出していた。
「よっ、と……立てるか?」
「ぐすっ……」
すすり上げる声と共に、少女は頷いた。そうしてその顔に目線を合わせ、新川が言う。
「今からこのお水で君の怪我を洗います。ちょっと痛いけど、我慢出来るかな?」
「…………」
優しげな声でそう言うと、少女は少し嫌そうな表情を浮かべたが、コクリと頷いた。
「良し。じゃあこの水に怪我を当てて……」
促されるままに膝小僧を水流に当てると、冷たいのと、傷がしみたせいだろう。少女は一瞬ビクリとしたが、歯を食いしばって耐えているのが分かった。
ある程度傷口が綺麗になったのを確認すると、新川は「いいよ」と言う。
「よく我慢したね。偉いよ〜?」
微笑みながらそう言いつつ、新川は懐から妙な物を取り出す。それは、小さな小物入れのような物で、チャックを開けると、中にガーゼや消毒液。簡単なピンセットなど、幾つかの応急処置用の器具が入って居るのだった。
『へぇ……』
内心で感心していると、新川はその中から今はすっかり市販となった、傷口の感想を防ぎ、自己治癒を促進すると言う謳い文句の正方形の絆創膏を取り出す。
「消毒しないのか?」
涼人が聞くと、新川はコクリと頷いた。
「洗浄した後は、消毒するよりもこっちの方が良いんですよ」
「へぇ〜……」
詩乃から聞いたが、流石に医学部志望と言うべきか。そんな事を思って居る間に、新川は絆創膏を張り終え、はにかむように笑って視線を合わせたままの少女の頭を撫でた。
「うん。これでもう大丈夫。この絆創膏の真ん中がぷくっとするまで、剥がさないようにね?」
「うん……」
コクリと頷くと、新川はもう一度微笑んで立ち上がり、少女を少し離れた場所で心配そうに此方を見ていた少年の方へと促す。
トテトテと駆けていった少女に少年はしばらく「大丈夫?」や「痛くない?」等と聞かれていたが、コクコクと頷いて返していた。やがて少年が新川と涼人にぺこりと頭を下げると、少女はブンブンと新川に手を振り、ニパッと輝くよう
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