GGO編
九十九話 少年の内は何を宿すか
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新川に、涼人が声をかけた。
「……あのよぉ新川」
「……何ですか?」
「一応言っとくけど、俺は別に彼奴の事狙ったりしてる訳じゃねえから、安心して良いぞ?」
「え……?」
涼人が呆れたような調子で言った一言に、新川が唖然としたように此方を見た。
「まぁ警戒するのもわからねえでも無いがなぁ……少なくとも、お前の恋路を邪魔する気は俺には無いわけで……」
「い、え、いや、何で……!?」
分かるんだ。と言いたげに涼人を見た新川を涼人は面白そうに見返す。漸く睨む以外の表情を見せてくれた。
「何でって……そりゃお前、あんだけ詩乃の事しょっちゅうチラチラ見て、お前から見たら詩乃の他の男友達って肩書きの俺を警戒心丸出しで睨んでりゃ、いくら俺でも気付くって」
「な……な……」
新川はもう言葉に詰まるくらいしか出来ないようだった。涼人の前で固まり、動けず涼人のニヤニヤ顔を眺めている。
それが面白く、涼人はニヤリと笑うと新川と肩を組んだ。
「まぁ、よ。とにかく!俺の方は気にせずに詩乃と距離縮めちゃってちょーだいな。彼奴その手の事未経験だから一気には行かねえと思うけどよ。応援するぜ?」
「は、はぁ……でも、今の朝田さんそれどころじゃ無さそうで……」
肩を組まれたせいだろうか?戸惑ったような口調で、おずおずと新川が返してくる。
「ん……?」
何で?と聞こうとした時だった。
「やだー!あそぶのー!」
「だめだっていってるだろー!」
幼い声が聞こえて、二人は其方を向いた。見れば、公園の入り口で7歳位の少女が9歳くらいの少年に腕を掴まれ、振り解こうとその腕を引っ張っている。少年の方は手に小さなビニール袋を持っていて、差し詰めお使い帰りと言った所か。
恐らくだがあの二人は兄妹だろう。お使いの帰りに妹の方が公園で遊びたいと言い出して、真面目な兄がそれを引き止めて居るという構図か。
別にこれだけなら構う必要も無い。ただ……
「わっ……」
少年の手から少女の腕がすっぽ抜け……
「きゃ……」
思いっきり腕を引っ張っていた少女がバランスを崩し……
「きゃうっ!?」
彼女が転んでしまったりすると、状況も変わってくる。
「う、うぅ……」
あっと言う間に少女の目には涙が溜まり……
「うあああぁぁぁぁん!!」
泣き出す。当然少年の方は駆け寄るが、オロオロとするばかりで何も出来ずに居るようだ。
「あーりゃりゃ……お?」
「はぁ……」
涼人が溜め息を吐きそうになりつつ歩き出そうとすると、歩き出そうとする……より早く、新川が気怠げに溜め息を吐きながら、彼女に歩み寄っていく。
「大丈夫?」
「ふぁっ!?えなが……えなが……」
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