GGO編
九十九話 少年の内は何を宿すか
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「く……よ!」
『ん、なんだ?なに怒鳴ってんだ?……痴話喧嘩か!?』
すぐ近くに会った有料駐車場に車を停め、気付かれないように公園の裏からこっそりと近づいた涼人の耳に、詩乃の怒ったような声が聞こえ、涼人は思わず耳をすませる。
「……なに?新川君」
あ、違った。別に新川少年と喧嘩しているわけではないようだ.。
と、少し驚いたような様子の少年の声が、涼人の耳に響く。
「いや……珍しい……って言うより、初めてだからさ。朝田さんがそんなに他人の事そんなに色々言ってるの……」
「え……そう……?」
「うん、朝田さんってさ、普段はあんまり他人に興味無いって感じだし」
『ほぉ……』
涼人は内心で呟いた。他人に興味が無い……?そこまで詩乃は人嫌いではなかったはずだが……
「……いや」
否。逆だ。詩乃が人嫌いになったのでは無く、恐らくこの間聞いた話の関係で他人が詩乃を避けるようになったのだろう。
『ったく、どいつもこいつもケツの穴のちいせぇこって……』
人を一人二人、それも母親を守るために殺したから何だと言うのだ。
そう思ってから、涼人は自分の方が感覚的におかしいのだと言う事を思い出して苦笑した。
と、そこまで考えて、そろそろ出て行かないと気づかれた時に怒られそうなので歩きだす。
「いんや、これが案外怒りっぽかったりするんだぜ?そいつ」
「!?」
「っ……」
突然公園の入口に入ってきた涼人に、詩乃と新川が其々驚いたように振り向く。苦笑しつつ紙袋を持った手を上げる。
「おっす、御二人さん」
「り、りょう兄ちゃん!?」
「…………」
詩乃は目を見開き、新川は「なんだこいつ」と言った様子だ。少し不機嫌そうにも見える。
どうやらお邪魔してしまったようだ。
「よ、詩乃。何してんの?デート?」
「でっ……!?違うわよ!この間そう言ったでしょ。まったく……」
涼人が聞くと、詩乃は一瞬反応した後即座に否定する。ちなみに新川はと言うと、一瞬ぴくっ!と反応した後、詩乃の否定で肩を落とした。間違いない。詩乃に気が有る。
「あー、そだっけか?やれやれ、少しは青春に性出せよ」
「余計なお世話。それより、どうしたの?」
そっけなく言うと、詩乃は首をかしげて聞いてきた。涼人は苦笑しながら右手の紙袋を再び上げる。
「これ。こないだ美幸が言ってたろ?晩飯作るって。試しに逸品作ってみたわけだ」
「へぇ〜」
差し出した紙袋を受け取りつつ、詩乃は首をかしげる。
「って、りょう兄ちゃん料理できたの?」
「ま、引っ越してからは色々あってな。覚えた」
「中身は?」
「筑前煮」
「あー……」
涼人が言うと、詩乃は何か納得したように頷いた。そうして、小さく笑う。
「らしい」
「何が言いてぇんだよ」
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