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もう建て替えろ
第一章

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                もう建て替えろ
 築五十年である、その為。
「流石にガタガタだな」
「あの、もうね」
 夫の林幾造にだ、妻の静香が言ってきた。
「建て替えましょう」
「そうするか」
「幾ら何でもね」
 妻は黒髪を伸ばしポニーテールにしている。楚々とした感じの顔で背は一六〇位で胸がかなり目立ち夫は面長で平たい顔をしていて背は一七〇位で痩せていて黒髪は短い。
「五十年だとね」
「地震がきたらな」
「台風でもよ」
「一発だな」
「だからね」
 それでというのだ。
「もうね」
「建て替えるか」
「お金はあるし」
 家は不動産で駐車場も賃貸しもしていて収入はある。
「それじゃあね」
「ずっといて馴染みある家でもな」
「快適でもね」 
 それでもというのだ。
「流石にね」
「五十年になるとな」
「地震が怖いから」
「傷みも見えてきたしな」
「建て替えましょう」
「そうするか」
「ええ、もうね」
 こうしてだった。
 家を建て替えることになった、夫婦は暫く近所の自分達が持っているマンションの一室に入ってだった。
 まだ小学五年の父そっくりの息子の慎太、三年の母そっくりの娘佳奈は家に愛着があって言うのだった。
「あのお家好きだったのに」
「建て替えなくてもよかったのに」
「残念だよね」
「そうよね」
「今度はもっといい家になるからな」 
 父は二人に言った。
「だからいいんだ」
「いいの?」
「そうなの?」
「どんなにいい家も何時かはガタがくるからな」 
 子供達以上にずっと暮らしていて愛着があって言うのだった。
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