第3部
サマンオサ
サマンオサの夜明け
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はぺろっと舌を出した。そんなシーラのいつも通りの仕草に、私はつい笑みをこぼす。
「う……」
そのとき、ルークの目蓋がピクリと動いた。
「あ、気が付いたみたい!」
シーラの声に反応したのか、そのままルークは目を開けた。起きたばかりだからか、視線だけをキョロキョロと動かしている。
「ルーク!! 無事でよかった!!」
私はルークに詰め寄ると、彼の手を両手で握りしめた。凍ってるのかと思うくらい冷たくなっていた彼の手に驚きつつも、無事に生きていてくれたことに安堵する。
「あれ……、ボストロールは……?」
「あいつなら、私たちが倒したよ!!」
「え……!?」
私の言葉に半信半疑なのか、ルークは何度も部屋の中を見渡す。それでやっと納得したのか、私に向き直り大きく息を吐いた。
「本当に……、君たちだけで倒したんだ……。すごいね……」
茫然とするルークに、私は鼻を高くする。あんな強い魔物を倒したんだ、きっとルークもこれ以上私のことを子供扱いしないだろう。
だが、私の期待していた反応とは裏腹に、ルークはがっかりした様子でため息をついた。
「はあ、せっかくミオを守るって決めたのに、自分だけやられるなんて、情けないなあ」
「な、何言ってんの? ルークがシーラを守ってくれたから、危険な目に遭わずに済んだんだよ?」
「そうそう、るーたんはあたしの命の恩人なんだからね! ちょっとお腹が千切れかかってたけど!!」
『そうだったの!?』
シーラの衝撃発言に、私のルークの声が見事にハモった。
「あー、ごめんごめん。ちょっと盛ってた」
そうは言うが、けして軽い怪我ではなかったはずだ。そんな状態だったのに、シーラは動けるほどにまで回復させたのだ。改めて、彼女の賢者としてのすごさが理解できた。
「ふん、結局一般人がここに来るべきじゃなかったってことだ」
せっかくの和やかな雰囲気に横槍を入れたのは、言うまでもなくユウリだ。トゲのある彼の言い方に、温厚なルークの眉根がぴくりと上がる。
「ユウリ!! そんな言い方するなんて酷いよ!! ルークだってあいつを倒すために……」
「いいんだミオ。彼の言うとおりだ」
そう言って、ふらつきながらもルークはその場から立ち上がる。
「僕がもっと強ければ、怪我なんてすることもなかった。君を守ると言っておいてこんな有り様じゃあ、これ以上言い訳なんて出来ないよ」
「るーたん、まだあんまり無理しないで。完全に傷が塞がったわけじゃないんだから」
シーラが制するも、ルークは一人この場から離れようと歩き出す。
「治してくれてありがとう。僕は一足先に家に帰ることにするよ。ミオ、もしこの国を出るときは、一度僕の家に寄って欲しい。それじゃ」
「待ってルーク!!」
彼の背中越しに呼び止めるが、彼が歩みを止める
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