第二章
[8]前話
「投げ過ぎないことだよ」
「足腰だな」
「あとな」
こうもだ、古川は言った。
「昔メジャーで鉄アレイ持ってな」
「鉄アレイ?」
「それでシャドーピッチングする練習あったけれどな」
「駄目か」
「ああ、それやったら肩壊すんだよ」
そうなるというのだ。
「鉄球も同じだよ」
「そっちもか」
「沢村栄治さんは軍隊で手榴弾投げてな」
そうしてというのだ。
「肩壊したんだよ」
「手榴弾も重いからか」
「だから練習の時変に重いもの持ってな」
そうしてというのだ。
「ピッチング練習するのはな」
「やったら駄目か」
「そんな無茶な練習はな」
「しないことか」
「ボールでやるんだよ」
野球のそれでというのだ。
「ちゃんとな、そこは忘れないでな」
それでというのだ。
「やっていってくれよ」
「わかった、そのことも気を付けるな」
「ああ、しかしお前が人の話聞いてくれてよかった」
古川は椎葉に笑顔でこうも言った。
「それでな」
「それでか」
「ああ、ちゃんと走り込み中心のな」
「そうした練習してくれてか」
「投げ過ぎないからな」
だからだというのだ。
「よかったよ」
「目でわかるよ」
椎葉は古川にボールを投げつつ返した。
「真剣に言ってくれる奴はな」
「目か」
「ああ、お前は真剣な目だからな」
「俺の言うこと聞いてくれたんだな」
「そうだよ、じゃあな」
それならというのだった。
「これからもな」
「言っていいか」
「そうしてくれ」
こう言うのだった、そうしてだった。
椎葉は古川や監督の言うことを聞いて練習をしていった、そしてエースとして活躍し大学を出てからは大学を運営している世界的な企業グループ八条グループが経営しているプロ野球リーグ八条リーグに入りそちらでも活躍した、その彼が違うチームにキャッチャーとして入った古川と勝負したのはまた別の話である。
まず足腰 完
2024・10・18
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