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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十八話 進攻準備
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宇宙暦796年5月20日13:15
バーラト星系、ハイネセン、ハイネセンポリス郊外、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍統合作戦本部ビル、大会議室、
オットー・バルクマン

 これからこの大会議室で、帝国領再出兵に関する指揮官会議が行われる。参集範囲は統合作戦本部長、宇宙艦隊司令長官、そしてその司令部参謀、各艦隊指揮官及び各艦隊司令部参謀、それに各艦隊の分艦隊司令…要するに大きな会議だ。通常こういう会議には分艦隊司令クラスの指揮官は参加しない。各艦隊に所属する分艦隊の運用は艦隊司令官に一任されているからだ。それが俺達の様な分艦隊司令まで参加させられるという事は…。
「ヤマトの奴、勝手は許さないって感じだな」
マイクが呟く。マイクの言う通りだろう。
「ああ。ムーア提督達の事、怒っていたからな、三馬鹿とか言って」
再出兵という事態が、ムーア、ホーランド、ルグランジュの三提督のスタンドプレーによって引き起こされたという事は、軍内部でも多くの者が知るところとなっていた。そしてその行為は本人達の思惑と違って、軍内部でも批判の声が大きかった。
「いくら幕僚会議の開催要請権があるからって、軍の方針に反する事を自分の部下が勝手に言い出したんじゃ、ヤマトだって怒るさ」
「ああ。確かに幕僚会議の開催要請については上官の許可は必要ない。だからといって話を通さなくていい訳じゃない」
「そうさ。そもそも本部長やトリューニヒトの野郎…国防委員長はいい顔しなかったんだろ?自分達の出番が欲しいって、欲丸出しじゃねえか。しかもそれにサンフォード議長が支持率アップの為に乗っかったんだろ?とんでもねえ。軍は政治家の玩具じゃねえぞ」
政府は帝国領への再出兵を発表したが、同盟市民からは不評だった。ヤマトの言っていた、ガス抜き効果が顕著に現れていたからだ。新領土…アムリッツァの経営が順調なのもそれに輪をかけていた。イゼルローン要塞を奪取し、アムリッツァを抑え、それによって国内の再開発が促進され内需が拡大…同盟市民の所得も大幅な増加傾向にあった。要するに同盟市民は現状に満足し始めているのだ。それに、発表した時期が悪すぎた。再出兵が発表されたのはトリューニヒト国防委員長が捕虜交換の為にフェザーンに出発した直後だったからだ。『議長は捕虜が戻らなくてもいいと思っているのか』、『国防委員長を見殺しにするのか』…等、逆に批判を受ける事になってしまっている。
『ボーデンでは敗けたがアムリッツァは守られた。軍はその任務を果たしている』という国防委員長の見解は結果的に同盟市民に是として受入られていると言っていい。冷静に考えれば全くその通りだからだ。結果として政権の支持率は一時的に下落したものの危険水準になる事はなかったから、政権全体というよりはサンフォード議長個人の支持率が落ちた、という方が正しいのか
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