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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十八話 進攻準備
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現にボーデンの戦いでも自分の艦隊の崩壊は防いでいる。ラインハルトに好き勝手された戦場でそうなのだから、見るべきものはあるだろう…問題はアル・サレムとムーアだ。劇中でミッターマイヤーを『まるで疾風だ』と詩的に評したこのおっさんは、それ以外の描写をされていない。本人が戦死してしまったから全てが謎に包まれている。戦死した後で指揮を引き継いだモートンの手腕がクローズアップされてしまったから、無能なのか、それともミッターマイヤー級艦隊司令官以外とならまともに戦えるのか…そしてムーアだ。原作では闇落ちフォークと並んで第一級の無能者として描かれている。粗野で豪胆な司令官、と評されているが、現実問題として粗野で豪胆なだけでは艦隊司令官にはなれない。まあ、部下に対してイエスマンを求める傾向はあるものの、描写を見る限りは最後まで心折れずに戦える司令官である事は間違いない…まあ、良い見方をすればだけど…。

 「はい。上に立つ私が言うのも今更なのですが、私は皆さんと共に戦った事がありません」
「はあ」
「ですので皆さんにはこれからシミュレーションをやってもらいます」
皆が驚いた顔をした。彼等と同じ様に会議室に残ってくれたグリーンヒル本部長やビュコック司令長官も同じ様な顔をしている。
「あくまでも皆さんの傾向を知る為のものですから、心配しないで下さい。勝敗は関係ありませんし、結果によって皆さんに不利益は生じませんよ」
会議室を出て、不承不承といった面持ちで四人がシミュレーションルームに歩いて行く。グリーンヒル本部長も半ば呆れた顔をしている。
「君は…相変わらずとんでもない事を思い付くな。現役の艦隊司令官にシミュレーションをやれ、だなんて」
「こんな事の為にわざわざ艦隊を動かす訳にはいかないでしょう?動かしていいならそうしますが。どうです、司令長官」
「率いる指揮官達の癖が分からんのでは、確かに戦いにくいからの。じゃが、前代未聞じゃな。副司令長官、彼等に嫌われんようにな」
彼等に嫌われんように…か。用兵家として一目は置かれていても、上司としては尊敬されていない…と感じているのだろう、ビュコック長官らしい忠告だった。人材的に仕方のない事とはいえ、やっぱりビュコック長官は宇宙艦隊司令長官には向いていないのかも知れない。帝国軍のメルカッツに似ているだろう。用兵家である事と、人の上に立つ事は違う。司令長官という立場なら尚更だ、人の上に立つ指揮官達のそのまた上に立つのだから、生半可な者では勤まらない。ビュコック長官が中途半端と言っている訳じゃないんだ、ビュコック長官が司令長官としての権威を身につけるには、絶対的な勝利が必要なんだ。だがそれを得るのは少し難しい。俺が副司令長官に任命されてしまったからだ。それは『ビュコック、お前だけでは不安だ』、と言われたのに等しい。しかも困
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