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残業禁止令
第一章

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                残業禁止令
 いきなりだ、会社のトップが言ってきた。
「残業禁止か」
「そうです」
 それを決めた社長の娘でずっと海外の他企業で働いていた三宅陽子が言って来た、きつい感じの黒い目で唇は赤く顔は小さく黒髪を首の付け根の高さで切り揃えている。背は一六〇位だがモデル並の整ったスタイルでスーツとズボンとヒールがよく似合っている。
「これからは」
「あの、お仕事が多くても」
「禁止です」
 あくまでとだ、社員の一人に言った。
「原則として」
「そうですか」
「定時前出勤も言いません」
 それもというのだ。
「フレックスタイム制を導入し」
「そうしてですか」
「勤務時間以上の勤務はです」
「認めないですか」
「決められた時間の中で働いて」
 そうしてというのだ。
「そうしてです」
「働いていくことですか」
「そうして下さい」
 こう言うのだった、そうしてだった。
 実際にだ、三宅は会社で残業を認めないことになった、このことに喜ぶ社員は多かったが自分達も禁止と言われた管理職の面々は困った。
「大丈夫かな」
「やっていけるかな」
「忙しいのに」
「残業禁止されて」
「仕事回るかな」
 心配になっていた、だが。
 残業は原則として許されなく申請して必要でないと認められなくなった、それで社員達は決められた勤務時間の中で働く様になった。
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