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おぢばにおかえり
第八十三話 回廊ひのきしんその二十八

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「先輩はね」
「少なくともひのきしんは真面目ですね」
「いさんでね、そんな先輩を見て」 
 そうしてです。
「私も二年の先輩もね」
「いさんでおられたんですか」
「そうだったのよ」
「そうなんですね」
「ええ、新一君もわかってね」 
 私は心から言いました。
「長池先輩はこうした方よ」
「先輩のお手本になる位の」
「そうよ」
 はっきりと言えました。
「そんな人だから」
「そうなんですね」
「私に悪いことなんてね」
 寮で一年間一緒にいてもです。
「全くよ、二年の人でもね」
「同じだったんですね」
「物凄くいい人だから」
「あの、ちっち」
 ここで先輩が言ってきました。
「そんなこと言われたら」
「駄目ですか?」
「ちょっとね」
 先輩は気恥ずかしそうに言われました。
「私立派な人じゃないわよ」
「だからですか」
「そんなこと言わないで」
 こう言われるのでした。
「お願いだからね」
「事実でもですか」
「そうしたこと言われることは苦手なのよ」
「ああ、こうした一面もあるんですね」
 新一君はそんな先輩を見て言いました。
「この人には」
「ずっと言ってたでしょ」
 新一君にまた言いました。
「凄くいい人だって」
「いや、そうですが」
「信じなかったの?」
「先輩も人間なんで」
「人間って何よ」 
 そう言われてもわかりませんでした、人間がどうとか言われても。それで新一君にそのことを聞きました。
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