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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#10
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 レド様の背後へと滑り込んだ私は、太刀に変えた【聖剣】で、振り下ろされた両手剣を薙ぎ払った。黒い両手剣が半ばから折れる。

 今度はその首を落とすべく手首を返したが────敵は地を蹴って後方へと跳び、私から距離を取った。

 私は【武装化(アーマメント)】を解除して、元の姿に戻る。

 【共有魔力】に切り替えて全快したはずの魔力が、すでに半分近くまで減っている。

 ラムルが【回帰】を行使して戦い続けていることもあり、レド様の魔力も残り少ない。

 レド様の魔力がなくなれば、ラムルが固有能力を行使できなくなるだけでなく、セレナさんも魔術を発動できなくなる。レド様自身も、身体能力を強化できなくなって、戦力が大幅に落ちてしまう。

 私が、魔力を使い尽くしてしまうわけにはいかない。

 【聖騎士(グローリアス・ナイト)】の装備を使わずに、魔獣とあの個体を討伐するしかない。

 私は【(インサイ)(ト・アイズ)】を発動させて────剣を折った私を睨みつけている、そのオーガを視る。

 意外なことに、魔獣化はしていなかった。内包する魔力量は多いが、変異種にとどまっているようだ。

 ただ────顔や胸、両腕や両腿を覆う毛と、剥き出しの硬そうな皮膚が、黒ずんでいるのが気になる。毛にも皮膚にも大量の魔力が視えるから、そのせいだとは思うけど────何だか異様に感じた。

 それに────あの変異オーガは、魔力を循環させている。先程討伐した変異オーガとは違い、起点は見当たらない。おそらく、自分で魔力を動かしているのだろう。

 変異オーガは私を睥睨しながら、おもむろに、折れた両手剣の刃を握った。

 魔力で強化された皮膚といえど、【霊剣】なら傷をつけることはできるようで────人間のそれより赤黒い魔物の血が、開いた傷口から滴り落ちた。

 極寒の地で外気に触れた水が瞬時に凍り付くように、血が瞬く間に流れ落ちた状態で固まる。


固定魔法【凝固】、会得しました────


 ノルンのアナウンスが響く。

 あれが固定魔法ということは────私が予想していた通り、あの黒いオーガはエルフの記憶と経験を持っているのか。

 黒いオーガは、固めた血を折れた両手剣の断面に繋げると、魔力を注ぎ込んだ。血と両手剣に魔力が満遍なく行き渡ったとき、血と両手剣の境目が溶け合い、まるで初めから一つであったかのように一体化した。


固定魔法【組成】、会得しました────


 【霊剣】を創っただけでなく────変異種を生み出したのも、【転移港(ポータル)】に集落を形成したのも、このスタンピードを計画したのも、おそらく、あの魔獣じゃない。この────黒いオーガだ。

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