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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#10
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ングを逃さないようにしないと。
大太刀で、コボルトの首と胸の位置で構えている片手剣の先端を一遍に斬る。振り切ったところで太刀に変えて、片手剣を再び斬り落とす。これで、残り2頭。
そろそろ、【共有魔力】に切り替えないと────そう思ったとき、ノルンの声が響いた。
───
主
(
マスター
)
リゼラ、【共有魔力】に切り替えますか?───
「お願い!」
ほとんど無くなりかけていた魔力が、限界まで満たされる。
地下遺跡での失態を私が繰り返さないよう、ノルンも気を付けてくれていたのだろう。ノルンに後でお礼を言わなければ────そんなことを考えながら、私は最後の1頭に、刃を向ける。
最後の1頭───オーガの両手剣を切り刻んでから首を斬り落とした私は、その首が落ちるのを確認することなく、駆け出す。
前方には、またしてもオークの群れが立ちはだかっていたが────手に持つ武具は【霊剣】ではないようだ。それなら、無理に殲滅せず、イルノラド公爵たちに任せよう。
私は群れの手前で【聖剣】を槍に変えると、間合いを詰めて横薙ぎに大きく振るった。殺してしまうと死体に行く手を阻まれることになるので、穂先ではなく柄の部分を当てて吹き飛ばす。
槍をくるりとひっくり返して、空いた前方に踏み込む。そして、石突を地面に突き立て、“棒高跳び”の要領で、私は大きく跳び上がった。オークの群れを飛び越して着地すると、すぐさま奔り出した。
もう前方を塞ぐものは何もなく、魔獣と烈しく打ち合うレド様が眼に入る。
私が離れたときと、レド様と魔獣の立ち位置や向きが変わっている。魔獣は、私たちの拠点───つまりヴァイスたちの方に背を向け、レド様はそれに向かい合う形で対峙している。
4m近い魔獣との体格差をものともせず、レド様は棍棒を薙ぎ払い、すかさず大剣を叩きつける。
大剣は折れることなく棍棒と競り合い、レド様も魔獣の膂力に負けることなく渡り合ってはいるが────やはり、棍棒を掻い潜って、魔獣に傷を負わせるのは難しいようだ。
とにかく、【霊剣】を創っていたと思しき個体が出て来る前に、レド様に加勢してあの魔獣を討伐しなければ─────
「?!」
不意に、レド様の背後の空間に亀裂らしきものが走った。それは、ぐにゃりと大きく歪んで────音もなく開いた。
穴のように開いたそこから、両手剣の切っ先が飛び出す。両手剣が柄まで抜け出ると、柄に絡みつく太い指、その先の毛深い腕───それから、2本の鋭い角を持つ牛のような頭が現れる。
「レド様…!」
上半身を完全に潜った“それ”が────足を地に着けて、こちら側に降り立つ。そして、背を向けるレド様に、漆黒の両手剣を振り下ろす。
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