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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#10
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が魔獣に近寄っていく。どちらの手にも────漆黒の棍棒が握られていた。

 やはり、あの棍棒はあの3本だけではなかったのだ。

「?!」

 オーガの変異種は、こちらへは見向きもせず、魔獣の後方へと逸れていった。魔獣の巨体に塞がれ、オーガの変異種は視界から消える。

「まさか───貴族たちの方へ向かったのか…?!」

 レド様が、焦りを隠せない口調で呟く。

 変異種の持つ黒い棍棒は、“霊剣”だ。おそらく、“デノンの騎士”や貴族家の私兵に支給されている武具では、太刀打ちできない。

 だけど────私たちは魔獣を相手にしている。それも、前世の知識と経験を兼ね備えた魔獣だ。レナスが欠けている今、助けに向かう余力はない。

「…っ」

 あちらの陣営には、ファルお兄様がいる。ようやく和解して、また言葉を交わせるようになった────私の兄が。

 それから、共に魔獣討伐をして────笑い合ったこともあるオルア様。もしかしたら、もう嫌われてしまっているかもしれないけど────それでも、死んで欲しくなどない。

 それに─────

「リゼ───至急、助けに向かってくれ」

 レド様の言葉に驚いて、私はいつの間にか俯いていた顔を上げる。

 凛とした声音とは裏腹に、レド様の眼差しは優しい。

 レド様は、きっと、私が助けたいと思っていることを解っている。きっと────それを慮って、仰ってくれている。

「ですが…」
「言ったはずだ───俺はこの国の現状を変えたいと。それには、今回参戦してくれている貴族家の協力が欠かせない。たとえ当主でなくても、死なせるわけにはいかない。だから────助けに向かってくれ」

 確かに、レド様の言うことには一理ある。

 参戦してくれた貴族家は、反皇妃派か中立派だ。当主は勿論、子息や親族だけでなく、大事な私兵たちを死なせてしまっては────協力は得られないかもしれない。

「でも…」

 それでも、私は頷けなかった。

 だって────それでは、レド様のお傍を離れることになる。地下遺跡での後悔が過った。お傍を離れて、レド様の身にまた何かあったら────そう考えると、幾らファルお兄様たちを放っておけなくとも、レド様のお傍を離れるなどできない。

「心配するな、リゼ。剣が通用するようになった今────俺は、あの程度の魔獣にやられるほど軟じゃない」

 レド様は私の迷いなど見透かしているようで────そう言って、不敵に笑った。

「旦那様の仰る通り、そのようなご心配は無用です───リゼラ様。旦那様は、それほど軟ではない。それに、今回は私がお傍についております。リゼラ様の分まで、私がこの身を以て旦那様をお護りすると誓いましょう。ですから────どうか
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