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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第223話:燻る叛意
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人間の体に戻してあげるわ。それまでの辛抱よ」
そう言うとメデューサとベルゼバブは、ミラアルクを伴ってその場を離れた。ヴァネッサがミラアルクの背に向け手を伸ばすが、操られているミラアルクは伸ばされたその手に反応することなくやや覚束ない足取りで2人の魔法使いの後に続いて行った。
離れていく3人を見送ったヴァネッサは、滲み出る涙を拭う事もせず悔しそうに近くの壁を殴った。渾身の力を叩きつけられた壁は罅割れ、何度も拳を叩きつけられるとその部分にぽっかりと穴が開いた。
「く、そ……!? チクショウッ!? チクショウッ!?」
「何で……何で、こんな事に……!?」
何をどこで間違ったのかと、2人は自分達の運命を嘆いた。自分達はただ、普通の人間としての生活を取り戻したかった、ただそれだけなのに。
或いはあの時、伸ばされた手を取ってさえいれば、こんな事にはなっていなかったのかと後悔した。少なくともジェネシスや何を考えているか分からない訃堂などに比べれば、響達の方が余程…………
「……そうだ、まだ遅くない」
そこでふと、ヴァネッサは妙案を思い付いた。このままでは自分達は遠からず使い潰される。ミラアルクを洗脳して意志を奪い使役しているのがその証だ。きっと連中は自分達を自由にするつもりなどない。
向こうがそのつもりならば、こちらだってそれに合わせてやるとヴァネッサはある場所へと向かった。そこは半壊したチフォージュ・シャトーの中で、幾つかある無事な部屋の一つ。
そこには連れ去られた後未来と別れさせられ、監禁された奏の姿があった。天井から伸びる鎖で両手を縛られ吊るされた状態で、床に腰を下ろし壁に背を預けている。
「ん? 何だ、お前らか」
扉が開いたのを見て、奏が心を落ち着けようと閉じていた目を開いた。よく見ると、唇の端が少し切れて血が滲んでいる。
ベルゼバブが言うには、奏は颯人と言う特にジェネシスにとって厄介な魔法使いを牽制する為の駒とする為に連れてきたのだという。恐らくは人質交換と言う名目でキャロルと交換で返す際に、ミラアルク同様隠れて洗脳し後になって暴れさせるつもりなのだ。ミラアルクでさえ情に流され大人しくなった彼らにとって、奏はある意味で特攻を持つ存在になり得る。自分達が卑怯卑劣に手を染める存在であると自覚しているヴァネッサであったが、そんな彼女の目から見てもジェネシス、そしてベルゼバブの考えは反吐が出る様なものであった。
故にこそ、ヴァネッサはそれを利用する。そうする事がミラアルクを助け、自分達にとっても利益となる事を理解しているからだ。
ヴァネッサは一度周囲を確認して他の魔法使いの目がない事を確認すると、素早く奏に近付き彼女を拘束している鎖に手を掛けた。
突然のヴァネッサ
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