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金木犀の許嫁
第三十七話 織田作好みのカレーその十二

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「それで人情もあるから」
「それでなんだ」
「いい作品よ、夫婦善哉の作品もね」
「人のいい面も悪い面も書いていて」
「人情もあってね」
 そうしたものも書いていてというのだ。
「流れ流れて最後は落ち着く」
「その展開もいいんだ」
「そうだからね」
「読んでいいんだね」
「文章も読みやすいし」
 このこともあってというのだ。
「いいの」
「じゃあ本当に読んでみるね」
「高等部の大図書館にもね」
「全集あるんだ」
「さっきちょこっとお話したけれど」
「あるかな」
「あそこなら多分ね」
 後で調べるとあることがわかって佐京も読めた。
「そうだしね」
「それでなんだ」
「そう、それにね」
 さらに言うのだった。
「剽軽な作品もあるし」
「剽軽なんだ」
「笑えるね」
「純文学でもだね」
「そうなの、忍者の先生が出て来るの」
「忍者なんだ」
「ニコ狆先生っていって」
 そのタイトルの話もした。
「ある人が若い女の人を好きになったけれど」
「それで忍者が関係あるんだ」
「その女の人のお父さんが忍術の先生で」
「あっ、忍者にならないと」
「そう、娘はやらんって展開になって」 
 それでというのだ。
「弟子になって」
「忍術を学ぶんだ」
「その先生が犬の狆そっくりの顔で」 
 夜空はさらに話した。
「煙草の煙で姿を消す術を修行するから」
「ああ、煙草のニコチンと」
「狆を合わせてね」
 そうしてというのだ。
「ニコ狆先生なの」
「そういうことだね」
「それであらすじもね」
「剽軽なんだ」
「そうなの、面白いわよ」
「そうした作品も書いてるんだ」
「猿飛佐助なんて完全に活劇もので」
 そうであってというのだ。
「私達のご先祖様が忍術使ってお空も飛ぶのよ」
「昭和の忍者ものみたいに」
「三十年代のね」
 その頃のというのだ。
「そうした感じで」
「そうした作品もあるんだね」
「結構色々書く人で」
「忍者も書いていたんだね」
「昔のね」
「そうなのよ」
「じゃあそうした作品もね」
「読んでみる?」
「そうしていくよ」
 こう夜空に答えた、そうしてだった。
 二人は船場から法善寺横丁に向かった、そしてそこで今度は善哉を一緒に食べることになるのであった。


第三十七話   完


                    2024・8・8
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