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金木犀の許嫁
第三十七話 織田作好みのカレーその十一

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「もうね」
「続編があるとは考えていなかったんだ」
「二十一世紀になって発見されたのよ」
 その続編はというのだ。
「織田作さんは昭和二十二年、一九四七年にお亡くなりになってるから」
「二十一世紀に続編が発見されるとか」
「本当に誰も想像していなくて」
「それで見付かって」
 そうなってというのだ。
「別府に移住していたってわかったのよ」
「柳吉さんと蝶子さんが」
「そうだってね」
「まさかのまさかだね」
「織田作さんの作品は殆ど大阪が舞台なのよ」
 夜空はこのことを強く話した。
「大阪の市井の人達を書いたのがね」
「織田作さんの作品で」
「それでね」
 そうであってというのだ。
「別府に行くなんてね」
「なかったんだ」
「東京に出るのも」
 絶筆となった土曜夫人が舞台が東京に移るところで織田は東京に取材に行きそこで客施している。その直前に太宰治や坂口安吾とも会っている。
「滅多になくて」
「大抵の作品が大阪だから」
「本当にね」 
「別府は誰も考えていなかったんだ」
「私はそう聞いて読んだけれど」 
 夫婦善哉という作品をというのだ。
「本当に意外な展開よ
「別府に移るなんて」
「ええ、夫婦善哉で二人で善哉を食べて」
「それで終わりとだね」
「誰もが思う展開よ」
「それで納得出来たんだね」
「織田作さん作品終わらせるの上手だから」
 その結末がすっきりしていて読後感がよいと言うべきか。
「だからね」
「それで終わったって思えたんだ」
「皆ね。けれど本当に続編があるから」
「そりらを読んでもんいね」
「ええ」
 そうだというのだ。
「本当にね」
「じゃあ今度読んでみるよ」
 佐京は夜空に微笑んで答えた。
「俺もね」
「読んで後悔しないから」
「いい作品だね」
「大阪生まれでなくてもね」 
「読んでいい作品だね」
「そうなの。人のいい面も悪い面も書いていて」
 そうであってというのだ。
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