第五章
48.すべてを破壊し、すべてを造り出すもの
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、手を振ってから話し出した。
『フォルよ、やったな。わしの声は聞こえるか』
「はい、ヒースさん。聞こえます」
『ん、声が小さいかのお。ここまで頑張ってきたみんなに声をかけて元気にしてもらいたいのじゃが』
彼の言葉を受けて、あらためて席から戦場を見る。
教団側の者たちも、連合軍側の者たちも、皆同じ様子だった。
まだ、消えた丘と光線を発した尻尾を代わる代わる見て、ポカーンとしていたままだった。
『フォルくん。椅子から見て左上にある青い丸を押しながらしゃべると、普通にしゃべるだけでこのあたり一帯に聞こえるような大声を出せるよ』
「あ、そうなんですね? わかりました」
フォルは青い丸ボタンを押し、一度深呼吸をした。
「えー、聞こえますか? 私です、フォルです。ちょっと何を言ったらよいのかわかりませんが……教団の皆さん、お待たせしました」
うん、慣れていない感じがいいね――とタクトが笑う。
直後、教団の同志たちが一斉に歓声をあげながら、フォルのもとへと駆け始めた。
◇
「彼、生き返ったのね」
ムーンブルクの王女・アイリンが、少し離れたそれを見ながら言った。
ローレシア王・ロスは「そうみたいだな」と受け、ギガンテスすらかわいく見えるその巨体と、眼前の戦場を見つめた。
教団側の者たちが、希望に満ちた走りでフォルのもとに集まっていく。
逆に連合軍側は、すでに戦意を失っていた。恐れ慄き立ったまま固まっている者、腰が抜けてへたりこんだままの者が多数。中には、逃げ出す者も出始めた。
「カイン、聞いてもいいか」
前を向いたまま、ロスは横のサマルトリアの王子・カインに問いかける。
彼はロスの横顔を見て、穏やかな表情で「いいよ」と返した。
「これでも俺がこのまま戦い続けると言ったら、お前はどう思う」
「うん。相変わらず不屈の精神を持った、かっこいい友達だなって思うよ。僕はついていく」
ロスは「そうか」と言い、無表情でそのまま目の前の光景を眺めていた。
それを見て、カインの口角が少しだけ上がる。
「もう一つ、聞きたいんじゃないの?」
そう言われ、ロスはカインのほうに顔を向けた。
「……撤退する、と言ったら、お前はどう思う」
「そうだね。兵士さんたちのために退く勇気を持った、かっこいい友達だなって思うよ。僕はついていく」
緑の魔法戦士は、いつもの人懐っこい笑顔で答えた。
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