暁 〜小説投稿サイト〜
邪教、引き継ぎます
第五章
48.すべてを破壊し、すべてを造り出すもの
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丸があると思うから、それを指で押そうか」
「緑色の丸? ええと、これですかね……えっ!?」

 腰にベルトが装着され、椅子が急上昇した。
 頭がぶつかる。そう思って目をギュッとつぶったが、ぶつからない。その箇所の天井がパカっと開いたのである。

「これは……」

 暗闇の中で少しの時が過ぎ、行きついた先は、一転どこもかしこも窓だらけ。いや、窓だけで構成されているのではないかと思うような、小さな部屋だった。

 椅子のベルトが勝手に外れたため、フォルは立ち上がる。
 狭いのに、あまりにも開放感がありすぎた。前後左右はもちろん、上も、下すらも見える。

 そしてフォルは、窓だらけなのに頬に風をまったく感じないことに気づく。

「これは……ガラス?」

 すべての窓に大きなガラスが張られていたことに気づいた。
 これほどまでの大きさと透明度があり、かつ平面、さらには反射も少ないというガラスを見たことがなかったフォルは驚き、吸い寄せられるように顔を近づけ、そのまま外を見た。

 そこは高く、すべてを俯瞰(ふかん)できた。
 堀も、すっかり傷んだ柵も、炎上して倒れた櫓も見える。
 入り乱れていた教団の者たちとローレシアを盟主とする連合軍の兵士たちも見える。
 皆、すでに動きがとまっていた。
 そして全員がフォルを、フォルが乗っているものを見上げていた。

 ほぼ全角度が見えるため、フォルは自分がいまどんな形状をしたものの中にいるのかもわかった。

「頭が八つ、尻尾が八つ……」

 あまりに大きすぎる点はともかくとして、どうやら悪魔神官ハゼリオの資料に描かれていたものに近いという確信を持った。
 そして自分は、その八つの頭のうち、一番太くて短いものの先端にいるのだということも。

『フォルくん、今もおれの声聞こえるー?』

 その声で我に返る。
 下を見ると、自分が入っている乗り物の片足――短く、扁平で、異様に大きい――の近くに、シェーラに肩を貸してもらっているタクトがいた。

「はい、大丈夫です。聞こえています」
『何が何だかわからないと思うけど、最初が肝心だよ。今、全世界からやってきた兵士がじっと見てる。きみが手にした力がどれくらいのものか、無駄な血を流さない方法で彼らに知らせてあげないといけない。おれを信じて、これから言うことを騙されたと思ってやってみて』
「はい」

 フォルは指示のとおりにした。
 椅子に座り、指示されたボタンを押した。そして右手をスライム状の何かが満たしている円形の穴に突っ込む。

『右手の操作で、尻尾の一つが動くはずだよ』
「あっ、動きました。すごいですね。これ、キラーマシンと一緒で全部金属なんでしょうか」
『いいカンしてるね。そのとおり。大丈夫
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