見滝原保育園
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「何でついてくるのよ」
口を尖らせる香子。
ゆりねの家を出て、一行は共に見滝原の住宅街を横切っていた。
すっかり夕刻時になり、祐太の姪、ひなを保育園へ迎えに行く。彼と付き合っている香子も当たり前のように彼に付いていくが、彼女は冷たい目線ですぐ後ろのハルトとコウスケを睨んでいた。
「俺も下宿先こっちなんだよね」
「オレも、そこにちょいと寄って行こうかなって」
ハルトとコウスケは、ともに苦笑する。
美人が台無しになりそうなほどムスッとした顔の香子は、ふん、と鼻を鳴らした。
「……祐太、あなたの友達は随分と粘着質なのね」
「そう言わないでくれよ。前にひなを助けてくれたことがあるからさ。折角だし、ひなからお礼を言わせたいんだ」
「……」
彼女には随分と嫌われたようだ。
覚えのない敵意に、ハルトは苦笑を浮かべてコウスケに耳打ちした。
「コウスケ。祐太って人は、フロストノヴァのマスター候補でもあったんだよね」
「即無くなったがな。最近様子が変わってたんだが、彼女が出来て浮かれてただけだ。令呪もねえ」
「そっか。香子さんの方には……無いね」
ハルトは、香子の手に注目した。だが、彼女の白く傷もない両手に、令呪などという醜い刻印はない。
「なあ、そもそも大学内にフロストノヴァのマスターがいるって方針から見直さねえか? そもそも理由なくいきなり大学に現れたからマスターも大学にいる可能性があるってのが無理あるだろ」
「それを言い出したら、今度は手がかりそのものがなくなるよ。実際に、マスターに鳴り得るゆりねさんだっていたんだ。フロストノヴァのことは考えないとしても、大学でマスターがいる可能性は捨てきれないと思う」
「ああ……結局そこに行きつくか」
コウスケが項垂れる。
そうしている間に、香子がハルトへ振り向いた。
「あなた、下宿先って言っていたけど……学生じゃないのよね?」
「フリーターだよ。今はラビットハウスって喫茶店で住み込みで働いているよ」
「喫茶店!?」
その瞬間、香子の目の色が変わった。ハルトへ初めて、疑心以外の目が向けられる。
「どうしたの?」
「な、何でもないわ。……」
途端に、香子は口を閉じる。
だが、今の彼女は先ほどまでの警戒心からのだんまりではなく、自ら意識をして口に鍵をかけているようにも見えた。
「どうしたの?」
「だから、何でもないわ」
「そ、そう」
その場は、それで流れる。だが、十歩も歩かないうちに、香子が口を開いた。
「ねえ、その……ラビットハウスって、どんなお店なの?」
「どんなって言われると……アンティークな雰囲気のお店、かな」
「あとウサギだな」
コウスケの言葉に、ハルトは確かに
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ