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渦巻く滄海 紅き空 【下】
九十 めぐりあい
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と床を強かに叩いた音が厳かに会議室に響く。
火影の椅子に幾度となく手を伸ばし、そのたびに横から掻っ攫われた忍びの闇はようやく日の光を浴びられる未来を夢見て、眼光鋭く言い切ってみせた。

「この最悪の事態の後始末をし、忍びの世界に変革を成す者…このワシこそ希代の火影!」



ダンゾウの威圧感に圧倒され、一瞬言葉を失った面々がハッと正気を取り戻した頃には、全てが終わってしまっていた。
ある意味、脅迫ともとれるやり方に異議を唱える間もなく、大名に火影に任命されたダンゾウは、唇の端を歓喜に歪める。


念願の火影の椅子。
その座をようやっと手に入れた忍びの闇はこの時初めて心の底から歓喜に震えた。



















「おおっ、こりゃ木ノ葉もあっという間に復活できるな!」

ペイン襲撃ですっかり更地と化した木ノ葉の里。
其処では、現在、里人が力を合わせて里復興に奮闘していた。
というよりも、木遁を使える分、ヤマトの負担が半端なかった。

最初は見る影もなかった荒地が、ヤマトの木遁でみるみるうちに大木が生えてくる。
歓喜する人々とは裏腹に、木遁の使い過ぎでゼエハアと息を荒くしながら、「簡単に言ってくれますね…」とヤマトがぼやく。


ヤマトの木遁のおかげで木材が手に入り、盛り上がる里人達に反して、里の英雄は随分と沈んだ表情で顔を伏せていた。

「綱手のバァちゃんに話したいこといっぱいあったんだってばよ…」



行方不明となった五代目火影。
ペイン六道の本体である長門と対話し、見事解決して英雄となった彼女はしかしながら、綱手の姿が見えないことに心を痛めていた。
長門の【外道・輪廻天生の術】のおかげで死者は生き返っているだろうだから、綱手も生きているはず。
けれどその行方がわからないのであれば対処しようがない。

本当は元々誰一人死者がいなかった事実を知らないナルの落ち込んだ様子を見兼ねて、ヒナタがそっと精一杯励ました。



「だ、大丈夫だよ…っ、ナルちゃん…!綱手様は強いお人だから…!絶対すぐ帰ってくるよ…!」

ヒナタの励ましに少し心が軽くなったナルが顔をあげようとすると、聞き覚えのある声が自分の名を呼んだ。
癖のある挨拶に、勢いよく顔をあげたナルは、懐かしい顔触れに眼を瞬かせる。



「超久しぶりじゃのう!」
「波の国の英雄にまた会えて嬉しいよ、ナルの姉ちゃん!」


かつて波の国で出会った大工であるタズナと、同じく大工になったイナリ。
タズナとイナリを始めとした波の国の大工達は木ノ葉復興の為、そして昔の恩を返す為、急ぎ里に駆け付けてくれたのだ。


忍びの隠れ里を持たぬ、小さな島国である波の国。

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