九十 めぐりあい
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を振りかぶり、カルイは無抵抗のナルへ殴りかかる。
───その時 一条の金の矢が奔った。
「無抵抗の相手に…感心しないな」
何が起きたのかわからなかった。
気づいた時には、喧騒たるその場が静寂に包まれていた―ある青年の介入によって。
眩い金髪と、水晶のように透き通った碧の瞳。
両頬に髭のような三本の痣があるが、それすら愛嬌に見えるほどの端整な顔立ち。
絹のような白い肌に、漆黒の裏地とは真逆の純白の羽織をはためかせている。
男にしては華奢な造りであるため女でも違和感が無い。
青年を纏う異様な雰囲気。
一言であらわすなら【無】だ。
まるでその場に存在していないのかと見間違いそうになる。
しかし同時に青年は儚い美しさを印象づけた。そしてそれ以上に彼が静かに発する研ぎ澄まされた気配が、幻想的な青年の存在を確かに物語っていた。
それは一番最初の邂逅を彷彿させる再会。
初めて出会った場面を思い起こさせる出逢いだった。
「やめてくれないか」
時を忘れたその場は、青年の言葉で動き始める。
カルイの拳を受け止めた彼は、己の背後で呆然と立ち竦むナルを肩越しに振り返った。
突如介入した青年の容姿に見惚れているカルイには見向きもせず、優しげに微笑む。
「この子は俺の大事な――――」
似たようで違う。同じようで似ていない。
瓜二つのようで真逆の道を行く両者。
同じ日に生まれ、同じ時に産まれ、同じ世界に誕生したのに。
ボタンをひとつ掛け違えただけで、別々の世界を生きる、似て非なるもの同士。
お互いが鏡合わせのようで、遠く離れていた双方はこの時。
本当の邂逅を初めて果たした。
「大切な―――妹なんだ」
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