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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第222話:悪魔の取引
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間、アリスは形状を変えたハーメルケイン・レプリカのリッププレートに唇を当て、静かに吹き鳴らした。特にこれと言った名前のある訳ではない、適当な一音節を素早く奏でる。
するとその瞬間、ベルゼバブの体から火花のような物が散り彼自身も雷に打たれたかのように脱力してその場に倒れた。
「うぐぉっ!? あっ……な、何だッ!? 何が……!?」
突然力が抜けた事に困惑しながらも、立ち上がり魔法を放とうとするベルゼバブ。だが右手をハンドオーサーに翳しても、彼の魔法が発動する事は無かった。
〈エラー〉
「何ッ!?」
「あれは……まさか!」
アリスとベルゼバブの戦いを傍から眺めていたエルフナインは、ここで彼女のファウストローブの真の力の意味に気付いた。分からないのは弱体化しているベルゼバブ本人と、錬金術とはほぼ無縁な未来と翼のみ。
「エルフナインちゃん、何か分かったの?」
「恐らくですが、アリスさんのファウストローブの真骨頂は笛の音で周囲の波長を操る能力にあります!」
「波長を操る?」
――流石、エルフナインさん。キャロルさんから生まれただけあって、錬金術に対する理解が早い――
アリスが感心する様に、エルフナインの見立てはほぼ正解であった。
ハーメルンの笛とは、伝承では村を襲う鼠を追い払い、子供達を誘導して連れ去る事を可能とした。つまり音を用いて様々な事を成せるのである。アリスはその伝承に着目し、聖遺物としてのハーメルンの笛の能力を最大限に活かしてハーメルケインを作り出した。
その結果、輝彦が扱うハーメルケインは吹き鳴らせば他者の魔法をかき消す効果すら発揮した。実際、颯人達が初めて透達と対峙した時には、レプリカの方ではあったがアリスの演奏でクリスのギアの出力を落としたり、透の演奏を逆にかき消したりとデバフ方向で大きく活躍した。
ファウストローブのハーメルンの笛はその能力を最大限に発揮しており、笛を吹きならせば魔力だけでなくフォニックゲインをもかき乱して無力化するほどの力を発揮できるのである。この能力を発揮する為、単純なローブとしての出力では琥珀メイジにすら及ばない性能しか持っていないが、一度能力を発揮できてしまえば魔法使いだけでなく理論上はシンフォギアや他のファウストローブすら戦わずして無力化出来てしまう力を持っていた。
「己ぇッ!」
アリスの演奏による弱体化を受け、満足行動く事が出来ないベルゼバブはそれでも何とか攻撃を繰り出そうとした。だが全身に鉛を巻き付けた様に重い鎧を纏った状態では本来の力が発揮できず、得意の空間魔法も使えない状態では悪足?きも良い所。迫るベルゼバブの攻撃を、一旦演奏を止めて弾き反撃で逆に追い詰める事すら出来てしまっていた。
「ぐはぁぁっ!?」
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