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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#9
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と騎馬隊の正面からすると、変異オーガが縦に並んでいるため、奥の変異オーガも狙うとなると仕方がない。

 2頭の変異オーガが矢の雨に気を取られているうちに、ダズロは今度こそ変異オーガから離れるべく馬首を返す。

 馬を左に旋回させたとき、貴族家隊の様子が目に入った。

 変異オーガの棍棒によって吹き飛ばされ────蹲る騎士や私兵。

 中には何とか立ち上がっている者もいたが、剣は砕かれ、何処かケガをしているのか上半身を屈ませている。

 そして────矢が放たれる寸前まで変異オーガと戦っていたと思しき騎士が、別の騎士の肩に担がれて、その場を離れるところだった。

 今回は夜が明けていない状態での戦いで視界が暗いため、騎士も貴族の私兵も、バイザーのついていない簡素な兜を着用している。

 目鼻は露になっているものの、ダズロの位置からは二人の顔は判別つかなかったが、担がれている騎士が手にしている剣で、その騎士がセロムの息子セグルであると判った。

 ならば、担いでいる騎士はファルロだろう。

 ファルロとセグルは、確か共にドレアド伯爵隊に配属されていたはずだ。


 セグルの愛剣は、ノラディス子爵家に継承される魔剣で────セグルが“デノンの騎士”となったときにセロムから受け継いでいる。

 軍国主義時代に当時のイルノラド公爵が、側近を務めるノラディス子爵に褒美として与えたとのことだった。

 以来、ノラディス子爵あるいは子息は、戦場においてその魔剣を振るってきたが────これまで刃毀れしたことすらなかったらしい。

 しかし、セグルの手にある見慣れたそれは、半ばから折れていた。

(あの棍棒は魔剣ですら折ってしまうのか…!)

 変異オーガに攻撃を加えるには、あの棍棒を何とかするしかないのに────魔術もクロスボウも剣も盾も、あの棍棒には意味がない。

 もし棍棒を掻い潜って接近戦に持ち込んだとしても、あの素早さでは攻撃を入れるのも難しい。

(こうなれば────棍棒の攻撃範囲内には入らず、遠距離から魔術やクロスボウを四方から一斉に浴びせる他ないが…)

 魔術師たちの方を窺うと、皆一様に苦しげな様子だ。中には立っていられないらしく、座り込んでいる者もいた。

 あれは────魔力切れの兆候だ。

 ここまでの戦いの中で何度も魔術を発動していたのだから、無理もない。
 ウォレムが率いている方の魔術師たちも同じだろう。

 魔術師の魔力だけではない────矢だって、かなり減ってしまっている。

(せめて1頭だけであったなら、魔術やクロスボウがなくても、まだやり様があったのに────)

 ダズロが、思わずそんな(せん)のないことを考えてしまったそのとき────矢の雨
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