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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#9
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いずれも無残に砕けていた。

(盾が────砕けた、だと?)

 盾は、すべて国から貸与されたもので────耐久性を上げるため、今のところ鋼の中で最も硬度が高いセルニア鋼の素体に月銀(マーニ・シルバー)のコーティングがなされていた。

 ビゲラブナ伯爵が出し惜しみ、虧月騎士団に貸し出されたことはなかったので、ダズロが実戦で使用したことはないが────実験では、へこみはしたものの魔獣の攻撃に耐えたと聴いている。

 その盾を────変異種が、あの棍棒で砕いた?

(あの棍棒は、一体何だ?木でできたものではないのか?)

 あれだけの矢を弾いて、一本も刺さった様子はないし───盾を砕いて、折れる様子もない。

 陰に沈んで黒く見えているだけだと思っていたが、それにしては黒過ぎる。

「!」

 阻むものがなくなった変異オーガが、本陣の中心へと踏み込んで来るのが目に入り、ダズロは我に返った。

「総員、散開しろッ!!」

 盾隊の後ろで矢の装填をしていた弩隊と騎馬隊が、散り散りになって離れる。

 後方で待機していたバルデイン伯爵隊、ドレアド伯爵隊、グレミアム伯爵隊が───弩隊と騎馬隊から変異オーガの目を逸らすつもりなのか、各々の得物を構えた。2頭の変異オーガの眼が、そちらに向く。

(まずい────!)

 あの漆黒の棍棒には、おそらく盾も剣も意味を成さない。

「魔術師隊、魔術の発動準備をッ!アダン、弩隊と騎馬隊で無事な者を集めて矢を装填させろッ!」
「はっ!」

 アダン子爵が馬を蹴って駆け出す。

 5人の魔術師たちが、革袋から魔術陣が刻まれた魔石のメダルを取り出して────素手で掲げた。

 それぞれの魔術師の前に、魔術陣が展開していく。

「放て────ッ!」

 魔術陣から放出された、幾つかの火矢や水槍、旋風が、動き出そうとしていた2頭の変異オーガに迫る。

 変異オーガたちはさして慌てることもなく、矢のときと同じように棍棒を振る。棍棒は、いとも簡単にどの魔術も掻き消した。

(くそっ、あの棍棒には魔術も効かないのか…!)

 ダズロが、この状況を打開すべく頭を回らせていると────バルデイン伯爵隊、ドレアド伯爵隊、グレミアム伯爵隊が動き出したのが目の端に映った。

 変異オーガの意識が魔術師隊に向いているうちに、隙をつくつもりなのだろう。

(変異種の意識を、少しでもこちらに引き付けておかなければ────)

「魔術師隊、魔術の発動準備ッ!」

 先程と同じように、魔術陣が魔術師たちの前面に展開する。

 ダズロの思惑通り、変異オーガたちは魔術を警戒してこちらに正面を向けている。

「放て────ッ!」

 ダズロの号令の下、
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