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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#9
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野太い雄叫びが辺りに響き渡り、空気が微かに震えた。

 ダズロが視線を上げると、巨大なオーガのシルエットが前方を横切っていくのが目に入った。

(魔獣か…!)

 しかし、魔獣は向かって来る気配はなく、こちらに背を向ける。
 おそらく、ルガレドたちが相手をしているのだろう。

(嫌な予感は消えていない…)

 消えるどころか────動悸も激しくなるばかりで、嫌な予感はどんどん強くなっている。この嫌な予感は、あの魔獣のことではない。

 きっと────他に何かがある。

「閣下、第二弩隊、騎馬隊の準備が整いました」
「ご苦労」

 アダン子爵が戻る。“デノンの騎士”は勿論、どの貴族家の私兵もよく訓練されていて、さすがに対応が迅速だ。

 先程の魔獣の雄叫びで委縮しているのか、前線の向こうに群れているオークは足を止めている。

 味方部隊はといえば、どの部隊も、対峙しているオークをもう少しで殲滅できそうだ。

「第一弩隊、最前列へ!騎馬隊、次列へ!」

 クロスボウを持った騎士や兵士が抜け出て、最前列に並び立つ。

 そのすぐ後方に、馬に乗った騎士たちが、片手にクロスボウを持った状態で器用にも馬を操って並ぶ。

「第二弩隊改め盾隊、騎馬隊の後ろへ!」

 自分たちの胸下まである盾を携えた騎士あるいは私兵が、横並びに整列する。

「セロム────アルゲイド侯爵隊、ゲルリオル伯爵隊、ガラマゼラ伯爵隊を撤退させろ!」
「御意」

 セロムが魔道具を発動させると、程なくして、オークを殲滅し終えた部隊から撤退を始める。

 それを確認したダズロは、アダン子爵に命を下す。

「アダン、魔術師をここに集めてくれ」
「はっ」

 アダン子爵が再び馬首を返して、陣営の後方へと奔っていく。

 今回、各貴族家が所有する魔術陣だけでなく、少数ではあるが国からも魔術陣を貸与されている。そのため、すべての貴族家隊に1〜2名、魔術師を配属することができていた。


 前線へと視線を戻せば、3つの味方部隊すべてが撤退できたようで、こちらへと近づいて来ている。

 その後方にいるオークたちは追って来る様子はない。

 それを見て、ダズロは撤退させたのは間違いではなかったと───これから何か起こると確信を抱いた。

 そして────やはりというべきか、ダズロのその勘は当たった。

 何処からか鳴り響く────鼓膜を揺さぶるほどの雄叫び。

 よく聞けば、それは微妙にずれていて、別々の怒声が重なっているのだと判る。

 その雄叫びが消えないうちに、前方に立ち並ぶオークの向こうに二つのシルエットが現れる。

 シルエットの形状からオーガの変異種だ。先程の魔獣ほど巨体ではないが
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