第22話:霧の中の試練
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値稼ぎと言えば聞こえは良いけどな……体のいい虐殺なんだよ。お前のやってる事は」
だが、グートミューティヒの言葉はマドノには響かず、寧ろグートミューティヒの甘さを指摘する。
「だが、敗けたら意味無いぞ」
「負けだと?」
マドノにしては理論的で論理的な言葉がグートミューティヒを襲った。
「お前はお人好しだから、困ってる人を看ると直ぐそっちに行っちまうが、悩みの発端を殲滅できなきゃ、ただの無駄な御節介……騒音でしかない」
「俺のやってる事が、騒音だと?」
「例えば、お前が今回の様にダンジョンにいるボスモンスターの討伐を依頼されたとする。で、もしそのボスモンスターがお前の倍以上強かったらどうなると思う?」
「だとしても、そのボスモンスターが多くの人々を苦しめていると言うのであれば、誰かがそのボスモンスターを倒すしかないだろ。寧ろ―――」
「つまり、ボスモンスターを倒さなきゃ意味が無いって事だろ」
グートミューティヒが不覚にも停止してしまった。
「依頼を受けた奴がボスモンスターに敗けて死んだら、依頼した意味が無いだろ?寧ろ、依頼主は弱いザコに無茶で困難な依頼をした事について悩んで欲しいくらいだ」
「う……」
「それに、依頼を受けた奴が敗けて死んだら、その分だけ希望が減り、その代わりに絶望が増える。その責任、ただの死体に払い切れると思うか?」
グートミューティヒはまた停止してしまう。
「更に言えば、そのボスモンスターを倒したところで、そいつの背後にいる魔王が健在なら、また何時か代わりのボスモンスターが後釜としてやって来るかも知れないぜ?」
「それは……」
反論を試みるグートミューティヒだが、言葉が思い浮かばない。
「だからこそ、俺は経験値を稼ぐ必要がある。経験値をたっぷり稼いで、レベルを沢山蓄えて、万全の体勢で魔王を倒す。そうすれば、手下のボスモンスターは怯え臆し、そして逃げる」
「だが、その為に殺されるザコモンスターはどうなる?」
「くだらない理想論だな」
「……何……」
「戦いは綺麗事じゃないんだよ。どんなに偉そうな事を言っても、敗けて死んだら偉い理由の全てを他者に伝える事は出来ない。寧ろ、勝者に嫌われた敗者は偽りの汚名を着せられて、何も知らない馬鹿共に勘違いされて見当違いな侮辱をする」
「伝わらない……だと……」
「だから、勝ち続けないと意味が無い。だからこそ、何も知らない馬鹿共から視た貴様は……ただの愚者だ」
マドノがグートミューティヒに突き付ける『理想と現実の乖離』は、確かにグートミューティヒの心を抉った。
だが、牛乗りオーガが拠点としていた洞窟での惨劇に立ち尽くすアムの涙目を思い出した事で、漸く反論の言葉が浮かんだ。
「いや……違う!」
「何がだ?」
「例え当時の事を知らない未来人が何と言おうとも、俺
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