第四章 (2)
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つかる。ここはそんな場所だ。
「じゃ、なおさら僕ができることなんかないよ」
「いや、俺たちだからこそ出来ることがある」
紺野さんが、額を埋めた指の間から、ふっと僕を見た。そして、いやに小声で話し始めた。よく聞き取れないので身を乗り出す。
「お前に渡した着せ替えソフトあるだろう」
「あのこっ恥ずかしいMOGMOG着せ替えツール…」
「ほっとけっ…あれの通常版を、フリーソフトのサイトにアップした。他にも色々MOGMOGのマスターなら必ず欲しくなるようなソフトをあげておいた」
「…それが、紺野さんに出来ること?」
「ま、聞け。…こいつらには、スパイウェアが紛れ込ませてあるんだ」
「……え!?」
聞いたことがある。オンラインでダウンロードできるソフトには、スパイウェアという、個人情報やユーザーの行動を収集するソフトが紛れ込んでいることがあるらしい。
……ていうことは、紺野さんは僕の個人情報や行動を収集してるんじゃないのか!!
「ちょ、ちょっと紺野さん!あんた…」
「分かった、悪かった。スパイウェアだけアンインストールするソフトを送るから」
「そういう問題じゃないよ!」
「大丈夫だって。結局ほら、あの直後失踪騒ぎが起こってな、お前のデータ覗いてるヒマはなくなったし……ちょっとだよ、ちょっと覗いて終わりだよ」
「……何を見た」
「……ロリータメイド陵辱の館?」
「一番ヤなもん見てるじゃないか!!なんでビアンキは大事なメールとかは食うくせに、そういうの規制してくれないかな…」
「スパイウェアは、厳密にはウイルスじゃないからな…拾えるものもあり、拾えないものもある。俺が送り込んだのは、MOGMOGでは拾えないやつだ」
「威張るところじゃないよ!!…今、すぐ送ってよ、アンインストールソフト!」
「っち、細けぇなほんとに…」
「人のパソコンにスパイウェア送り込んでおいて何だよその言い方!!…で、どうするって?」
「このソフトをダウンロードするのは、例外なくMOGMOGのマスターだ。つまり、MOGMOGマスターを一網打尽に出来るんだよ。ここからがちょっと手間だが…スパイウェアでMOGMOGのシリアルナンバーを引き出す。そして失踪したあいつと同一のシリアルを持つMOGMOGが現れたら、勘付かれない程度に情報を引き出し、パソコンの場所を完全に特定する」
「……なんかどっちが悪者か分からない展開だね……」
「手段を選んでられるか。…俺が言うのもなんだが、こいつは元々、赤の他人の俺にインストールを任せるほど無用心な男だった。なのに突然おかしいだろう、あとかたもなく姿を眩ましたと思いきや、サーバーをいくつも経由して居所を掴ませないなんて」
いつになく神妙な面持ちで、呟いた。
「最悪の事態が、起こっているかもしれない」
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