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邪教、引き継ぎます
第五章
47.礼拝堂
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いけにえ》となります――」

 フォルが“破壊の神”という言葉を口にした瞬間に、ロスは床を蹴っていた。

「ッ……」

 フォルの前胸部(ぜんきょうぶ)から、刃が生えた。
 後ろには、剣の柄を握ったままの、青い剣士。

 貫かれた部位を、フォルは見ていなかった。そこに手をやることもしなかった。
 ただただ、先にある、像と鏡を見ていた。

 何も、起きない。
 何も、起きなかった。

「これでも、現れては……くださらない……のですね」

 ゆっくりと、剣が抜かれた。
 胸と背中から出る血が、みるみるうちにローブを赤く染めていく。

「フォル君。僕たちに何か言い残すことはある?」

 そばに来ていたカインが、目から光を失いつつあったフォルに声をかけた。

「いいえ……もう……何度も……お伝え……しましたから……この世界に……皆さんの居場所を……それだけを……願って……ここまで――」

 そこまで言うと、ゆっくりと倒れた。
 石の床に、赤い血が広がっていく。

「終わったな」
「そうね」
「……」

 ロスとアイリンが、短く言葉を発した。
 カインは無言で、広がっていく血だまりを見つめた。

 突如、神殿が激しく揺れた。

「――!」

 三人は、踏ん張りながら同時に天井を見た。
 破壊神シドーは、塔の天井を突き破って降臨した。まだ三人の記憶に新しい。

 しかし天井は壊れていない。

 揺れ方も、三人の記憶にあった、上から来る衝撃ではなかった。
 下から突き上げてくるような縦揺れだった。

「これ、地震!?」

 アイリンがそう言って、必死に杖で体を支える。
 その揺れは、石の床をまるで液体のごとくうねらせていた。

 そしてついには、太い石柱までが倒れ出す。

「神殿が崩れる! ロス、アイリン、僕につかまって! 脱出しよう!」

 二人が自身の体に触れたことを確認すると、カインはリレミトの呪文を唱えた。
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