暁 〜小説投稿サイト〜
邪教、引き継ぎます
第五章
47.礼拝堂
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 神殿に入り込むことに成功したロトの子孫三人組は、すぐに異様な雰囲気を感じ取った。

「人っ子一人いないわね」

 無言で進む先頭のローレシア王・ロスの後ろで、ムーンブルクの王女・アイリンが疑問を口にした。

「やっぱり、もう逃げていたり? フォルという魔術師は」
「ないない。一番奥に礼拝堂があるらしいから、そこにいるよ」

 サマルトリアの王子・カインが、彼女の隣を歩きながら自信満々に断言すると、ロスが後ろを向いた。
 カインは目を合わせ、微笑を返す。

 それに対し、ロスは特に何か言うわけでもなく。
 すぐに前に向き直り、やはり無言で進み続けた。



 ◇



 広い礼拝堂には、高窓からロンダルキアの光が差し込んでいた。
 神殿の外で乱戦が続いていることが嘘のように、静かだった。

 足音が三つ、礼拝堂に近づいてきて、止まった。
 青い剣士、緑の魔法戦士、紫の魔法使いの順で、ゆっくりと、開いたままの扉から入ってくる。
 三人は中に入ると、横に並んで止まった。

 礼拝堂の中央で立っていたのは、仮面を着用していない、杖を持った一人の魔術師であった。
 入ってきた三人――ロトの子孫たちを、静かに見つめていた。

 緑の魔法戦士・カインが口を開いた。

「後悔してる? ハーゴンの後を継ごうとしたこと」
「……いいえ」
「それは、今でも?」
「はい」

 (あお)い瞳に柔らかな光をたたえ、わずかに微笑んだカイン。
 それに対する魔術師・フォルの黒い瞳の光も、虚空(こくう)に向けて放っているかのような不思議な光り方ではあったが、柔らかかった。表情も、けっして睨みつけるようなものではなかった。

「たくさん調べました。たくさん勉強しました。あなたたちが来るまでに、なんとか、破壊神様を呼び出そうと」
「どうだったの?」
「すべて失敗しました」
「そっか」
「……ですが、まだ、試せていないことがあるのです」

 フォルが立っている場所には、石の床に大きな魔法円が描かれていた。
 背後、壁近くにそびえ立っているのは、大きな三つ又の槍のような石像。
 その隣には、漆黒の光を放つ鏡。

 青い剣士・ロスが、剣を握る手をやや()めた。紫の魔法使い・アイリンも、杖を構える。

「何度もやろうとしましたが、とめられてしまい、やらせてはもらえませんでした……同志の皆さんはとても優しい方々ですので……。でも、今ならできます。ハゼリオ様の最後のご命令に(そむ)くことになりますので、成功するとあの世で怒られてしまいそうなのですが、今はそれが、私が皆さんのためにできる最後の努力だと思います」

 フォルは振り向くと、両腕を広げた。

「破壊の神よ、私が|生贄《
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ