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くらいくらい電子の森に・・・
第四章 (1)
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「あそこまで証拠突きつけておいて、認めるもくそもないだろうが…彼女がお前の近くにいる限り、着せ替えツールの存在がばれないとは限らないだろ。もしも、あのソフトをインストールしたとしても、あれは通常のMOGMOGには適応しない。だから面倒なことになるまえに、柚木ちゃんに通常版を渡してしまおう…とな」
「……で、ついでだから女子大生とムーディーな地下の店で膝突き合わせてアッツアツのスフレ食おうと思ってたんだ……」
「……社会人はな、意外と出会いがないんだよ…。俺なんか篭りっぱなしの仕事だしな」
「へー、仕事って何」
「そんなんで口を割るほど大人は単純に出来てない」
紺野さんは軽く手を上げてウェイトレスを呼ぶと、珈琲を追加注文した。
「…お前はスフレ食ってもいいんだぞ」
「…いや、いいっす…」

ウェイトレスが去ってから、紺野さんは視線を僕に戻した。
「一つだけ、言っておく」
「なに」
「黙ってたのは悪かったけどな、お前たちを害するつもりで何か仕掛けたわけじゃない」
紺野さんは居住まいを正すように、組んでいた足を解いた。
「姶良。こんなことを聞くのは筋違いかもしれないが…今回の真相、全部知らないと嫌か」
「嫌だ…って言ったら?」
「仕方ない。お前と柚木ちゃんから手を引くよ。…あのMOGMOGは、あとかたもなくアンインストール出来る。もちろん、使い続けても害はない。好きにしろ」
「さっきも言ったけど」
少し、気楽な空気になってきたので、僕はいつもどおり声のトーンを落として、体を弛緩させた。
「なにもしないなら、別にどうでもいいし」
「…お前、現代っ子だなぁ」
ほっとしたような声色だった。…なんだ、紺野さんも、少しは僕を切るのを惜しいと思ってくれてたんだ。僕は、微妙な薄笑いで返して、珈琲を一口飲んだ。…気持ちが少し落ち着いて来たところで、僕は一つ、困ったことを思い出した。

柚木に、今日のことをどう説明しよう。

柚木の動揺につけ込んで、無理やり今日の逢引に割って入ったものの、柚木に説明できるような収穫もなく、僕はほぼ手ぶらで帰ることになるわけだ。

これで満足のいく説明が出来なければ、僕は柚木にひどい報復を受ける……!!

紺野さんは今までと変わらず「柚木ちゃん」と接触したいみたいだから、改めて「すんません、やっぱ紺野さん性悪ハッカーってことでOKすか」とか口裏合わせるわけにもいかないだろうな…
まてよ、今回の事を追及しないってことを盾にとって、口裏あわせに協力してもらうってテはどうだろう?
「…なぁ姶良」
急に声をかけられて、びくっと肩が震えた。…いかん、せっかくコトが丸く収まりかけているのに、僕は何を考えているんだ。
「なっなんですか」
「お前、俺と組んで仕事しないか」
「……へ?」

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