第四章 (1)
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た珈琲を一口すすって気分を落ち着かせると、改めて顔を上げた。
「で、なんで柚木ちゃんは来ない。そしてなんでお前がここにいる?」
「……悪いけど、今、柚木に会わせるわけにはいかなくなった」
…紺野さんの顔から、表情が消えた。
僕は、紺野さんの正面に座りなおすと、その感情の消えた顔をまっすぐに見据えた。
「柚木が、MOGMOGを手に入れていた」
「ああ。…聞いたのか」
「カマをかけたんだ。紺野さんに聞いているものと勘違いして、ぽろっと口を滑らせたよ」
紺野さんは、意外な面持ちで眉を上げた。
「ほう…お前って「そういう奴」だったんだ」
「…おかしいな、と思ってたんだ。茶封筒を貰って帰ってきてからの、柚木の態度。MOGMOG台無しにされたんだから、金が返ってくるのは当たり前だろう。なのに彼女は「完全に」機嫌を直していた。…だから、なんとなく思ったんだよ。柚木は、何らかの方法でMOGMOGを手に入れたんだ…って」
「それで、茶封筒に入ってたのは認証ページのアドレスとシリアルナンバーだな、と気がついたわけか。お前、意外と賢いな」
余裕しゃくしゃくの表情で、紺野さんは足を組みかえた。
「でもそれがどうしたんだ。…お前だからいうけど、あのシリアルは完璧に安全だぜ」
「そうだろうね」
言葉を切って、紺野さんを見上げる。再び、彼の表情が消えた。
「あれは、僕のシリアルナンバーだから」
「…………」
「ここから先は僕の想像だけど」
返事がないのを確かめて、僕は話し始めた。
「あんたは、転売屋なんかじゃない。どういう関わりかは知らないけれど、MOGMOGの開発に、何らかの形で関わってる」
「……なんで、そう思った」
「キャラクター選択画面を見たときの、反応だよ」
認証が終り、キャラクター選択画面を開いたとき、紺野さんと柚木の反応には、明らかな違いがあった。1ページ目に並んでいた、ちょっと萌え要素キツすぎてキビシイキャラクターにげんなりしてノーパソを閉じようとしたとき、紺野さんは「もっと後ろのページに行けば、大人しめのキャラクターがいるから…」と僕を促した。そして4ページ目でビアンキの原型になるメイドキャラをテキトーに選択したときだ。柚木が「もっとかわいいキャラクターいるかもしれないじゃん!」と、ごねたのだ。
柚木の反応が、普通なんじゃないか?
発売前、MOGMOGに関する情報は、驚くほど流布していなかった。「画期的なセキュリティソフトが発売される」という事実以外の情報を極力押さえることで消費者の関心、期待をあおり、発売と同時に一気に情報を流布させる。そして半年程度、品薄の状態を維持して、今度は買えなかった消費者の飢餓感を煽って買いたくて仕方ない状態にさせる…。多分そんな販売戦略なのだろう。
だからこそ、発売前の情報
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