第四章 (1)
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、ボロボロだった。最初、瘴気にあてられたのかと思って、何人かワクチンを渡しに行ったけれど、その子たちが「回避行動」を始めた。
その子は、首に鎖をつけられていて、体にはざっくりと深い傷跡。服はボロボロで、すごく、虚ろな目をしていた。
直感したの。これはウイルスのせいじゃない。やったのはこの子の「ご主人さま」だって。
「虐待…されてるのか?」
「ぎゃくたい?」
「………いや」
ご主人さまは、何か言いかけて飲み込んだ。俯いて、浅くため息をついた。こういうとき、私はどうしたらいいのか、まだ分からない。それが、はがゆい。
「…ご主人さまに悪い目に遭わされている子を、助けることは出来ないの?」
「そんな権限はありません。私たちは、ウイルス情報以外で他のMOGMOGに干渉できないもの。それに」
「…それに?」
「その子を買ったご主人さまが、その子をそうしたいのなら、それは正しい使い方なんです。その子は「悪いこと」をされる。でも、他のMOGMOGに影響を与えてない。私たちは、その子を「回避」するもの。…他の子と情報共有が出来ないから、ウイルスに感染したら大変かもしれないですけど」
ご主人さまが、肩を落としている。こういうときの彼は、とても落ち込んでいる。
なぜ、ご主人様が元気をなくすのか分からないので、ちょっとオロオロする。
ご主人さまは、力なく微笑んで、マウスでなでてくれた。
「…ありがとうな、ビアンキ」
…他のご主人さまのことはよく知らないけど、
私は、「いい人」に貰われた。
<i281|11255>
…取扱説明書の『トラブルシューティング』を、もう一度読み直した。やはり、ビアンキが変なウイルスに侵されて重くなっているわけではないみたいだ。
うつぶせに寝転んで、柚木が置いていったパソコンをぼんやり眺める。一応シャットダウンだけしておこうと思ったけれど、一見にこにこしているだけの『かぼすちゃん』は、なにげにしっかり仕事をしていた。
「マスター以外の操作は、お断りしてます♪」
と、あっさり却下されて、今はスクリーンセーバーが延々と動いている。僕を警戒してか、何度クリックしても解除されない。
「とりあえず、ウイルス感染のセンはなくなった…」
独り、呟いてみる。さっき着せ替えツールの重さも調べてみた。…たったの300mb。考えてみればCDに焼ける程度の重さのはずだ。
こんな理由探しは欺瞞だ…なんで僕は、まだ紺野さんを信用しようとしているんだ。僕は、もう充分すぎるほど確かな証拠を掴んでいる。
僕たちの出会いは、少し不自然だった。
紺野さんが「初めて」MOGMOGを目にしたときの反応も。
柚木の心の動きも。渡したシリアルナンバーも。
どうでもよかったからスルーしてきた、数々の「違和感」。
僕が被害
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