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同志諸君に告げる。これが理不尽だ!
第30話後半
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が止めるべきだったのです。あの時、最初に〈滅びの方舟〉を見つけた時に。貴方には、そのような感情を持って生きて欲しくなかった。……なのに、私は…貴方を止めることが出来なかった」

 そう語る彼女の姿が、やがてあの生きていた頃の、オリジナルのサーベラーの姿に代わっていた。
 自分が押し付けたに等しい行為を、サーベラーは自分の責任だと涙を流す姿に、ズォーダーも耐え兼ねた。

 「違う!」

 今度は、ハッキリとした口調で、サーベラーの謝罪を遮る。
 気づけばズォーダー自身の頬にも、流す事など絶対に無かった筈の涙を、彼はサーベラーと共に流していた。

 「お前は、この私の願いにただ従っただけなのだ」

 「しかし――!?」

 ふと、サーベラーの身体を抱き寄せるズォーダー。それに驚くサーベラー。
 
 この千年もの間、決して行わなれなかった抱擁だった。
 ズォーダーは、逞しい腕と胸板に、サーベラーを出来る限り優しく、だが思いを強く乗せて包み込んだ。

 「もういい」

 驚き、ズォーダーを見上げるサーベラーであったが、ふっと笑みを零して、両手で彼の頬を優しく添える。

 戦う事しかしなかったズォーダーが、より人間らしく、愛する事を覚えた、素晴らしいあの時代へ生きた彼が戻ってきた瞬間だった。
 
 「もう、いいんだ……」

 崩壊を告げる音が聞こえる中、少しして二人を包み込む強烈な光が漏れ始める。

 しばらくすると、光のせいでお互いの姿は見えなくなってしまうが、二人にとっては些末な事。
 それでもお互いが、そこにいるという暖かな感覚だけは伝わり続けている。それで充分なのだ。

 命の灯が尽きるその瞬間まで、抱きしめるズォーダーとサーベラー。

 「私は、お前をずっと、愛しているぞ、サーベラー」

 「ふふっ、その言葉、そっくりお返しします、あなた」

 そして二人の男女は、肉体が消滅する最後の最後まで穏やかな気持ちのまま――――生涯を終えた。
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