第9話
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スクールバスの窓ガラスに顔を貼りながらずるずると倒れていくペディの姿に、L・Jは溢れんとばかりの涙を流した。
ミニバンの後部ドアはL・Jの目の前で勢いよく閉まる。
いっそのこと、忌々しいウイルスにヤられ、死んでいればよかった。もう、こんな世界には生きたく無い。こんな苦しみを抱えながら耐えねばならないのなら……もう、生きたくは無い。
最愛の恋人を失ったL・Jは、そう思わずにはいられなかった。
カルロスはミニバンを移動させるよう言い、自身は野戦用トラックに戻ろうとする。
「キャー!?」
1人の女性の悲鳴が聞こえた。
スクールバスの下から生存者が飛び出してきて、車がある所とは別の方向に右往左往していたのだ。
「ケリー、今行くぞ!」
カルロスは見捨てられる訳もなく、ケリーを追いかける。カラスがケリーを追っていたというのもあるが、何よりもう目の前で死んでいく姿を見たくは無かった。
カルロスは生存者の腕を掴んで車に戻ろうとする。だが、先程まで生存者の1人が使っていた固定式火炎放射器が火を噴いたまま回転し続けていて、カルロス達を炎の中へと呑み込もうとしている。
火炎放射器を操っていた人物は、既に事切れていた。
カルロスはケリーを庇うべく、彼女を抱きしめつつ自身の背中を火炎放射器の方へと向ける。
(もっとも、俺達2人は直に呑み込まれるだろう…はぁ、苦しまずに死ねると嬉しいんだが)
カルロスは瞼を閉じる。このまま炎に包まれる…
(…ん?炎に包まれていない?)
かと、思いきやカルロス達は炎に包まれることは無かった。それだけで無く、その炎はカルロスの背中に差し掛かってはいるのだが、不可視のバリアに阻止されているのか、熱すら感じさせない。
(いったい、何が…?)
それから炎がよじれ、螺旋状に上がり始めた。まるで炎自身の意思を持っているかのように。あるいは、何らかの意思が炎を支配しているように。
カルロスは驚いて瞼を開け、周囲を見回した。数秒にも満たない時間で、炎を支配しているであろう人物を発見した。
カルロスは、また驚いた。何故なら自分が知っている人物であったからだ。
「…アリス」
アリスは両腕を垂らし、6m程の離れた場所に立っていた。
炎は幾つかに分かれ、カルロスとケリーを焼け包む筈であった炎は火炎瓶や火炎放射器よりも熱を増し、竜巻を作っている上空のカラスの群れめがけて向かっていく。
数秒後には空全体が眩く燃えていた。炎に捕えられ、地面に落ちて焼け死んでいく。
気がつけば、全てが終わっていた。
カラスは居なくなった。アリスのおかげで。
アリスは口元をほころ
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